株式会社東急コミュニティー(本社:東京都世田谷区、社長:雜賀 克英)は、災害対策の課題と実効性のある対策の啓発を目的に、30代以上の男女3,128名のマンション居住者※1を対象に、災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査を10月に実施しました。震災被害経験者(以下、「経験者」)と震災被害非経験者(以下、「非経験者」)の回答を比較・分析することで、世帯単位で行う「自助」、およびマンション単位で行う「共助」の災害対策の実態や課題が明らかになりました。
・調査結果の主なポイント
I.世帯単位で行う「自助」について、経験者から学ぶ、シミュレーションの大切さ
1.経験者から学ぶ 家庭で行う災害対策3要素
震災被害経験者の災害対策における優先ポイントは『3つのリスク』への準備。
1.命を守る(家具の転倒防止)
2. ライフラインの代替(懐中電灯・乾電池やカセットコンロ)
3. 生活必需品の確保(薬・メガネ・コンタクトレンズ)
2.経験者から学ぶ 災害を想定して行うこと
家族間での災害発生時の状況・初動の話し合いや共有が、震災被害経験者の日常的備え。
「シミュレーション」があるからこそ生まれる対策の具体性。
3.経験者から学ぶ 災害発生時の初動
30秒後に大きな地震が起きるとしたら?非経験者の「お手上げ」的回答が経験者の1.6倍に。
経験者の「想定」する力が、“もしも”の時にも諦めない気持ちの糧に。
II.マンション居住者の潜在的な「共助」意識は高い。だからこそ大事なマンションコミュニティー
4.「近隣世帯を助けようとする意識」は 78.6%。潜在的な共助意識の高さ
一方で「災害発生時に近隣世帯が助けてくれることへの期待」は 44.2%。意識の差が鮮明に。
“助けたい”を“助け合う”に。ギャップの解消は気持ちの通うコミュニティーづくりから。
5.知っていますか?お住いのマンションの災害対策
「知っている」の割合、500戸以上の大規模マンションが最も高い結果に。
管理組合によるイベントや行事など住民のコミュニケーションのための場づくりが有効。
今回の調査結果に対し、災害イマジネーションの重要性を提唱する東京大学の目黒公郎教授は「正しい予測と自覚に基づき、マンション単位での「共助」、世帯単位での「自助」の視点から最適な防災対策を考える『戸別防災(こべつぼうさい)』※2が安心・安全への第一歩なのです。」とコメントしております。
※1:3大都市圏と1995年以降に最大震度6弱以上の地震によって震度5強以上を観測した地域にお住まいの方
※2:戸別防災=地域や立地、住居や家族構成などの生活環境を踏まえ、災害発生時に起こり得る被害を事前にシミュレーションしたうえで、世帯およびマンション単位での具体的な防災対策を行うこと
I.世帯単位で行う「自助」について、経験者から学ぶ、シミュレーションの大切さ
1.経験者から学ぶ 家庭で行う災害対策3要素 ~震災対策は“3つのリスク”に対する備えが大事~
Q.あなたがご家庭で災害に備えて準備しているもの、対策していることについてあてはまるものをすべてお答えください。
・過去の震災で被害に遭った経験者とそうでない非経験者の家庭で行っている災害対策を比較しました。両者の差が大きい震災対策は「命のリスク」、「ライフラインのリスク」、「生活必需品のリスク」と3つのカテゴリーに分類できることが分かりました。
・経験者は、被害の実体験を踏まえた対策を行っていると考えられ、非経験者との実施割合の差の大きさは防災意識の差を表していると言えます。震災対策はこの“3つのリスク”に備えることが有効です。
・また、下記「参考データ」から分かるように、過去の大きな震災で最も多かった被害は「家具や家電製品の転倒」です。まずは「命のリスク」への備えを優先させ、“生き延びる”よりも“生き残る”ための対策を行う必要があると言えます。
※この比較の元となる「過去の大地震で被害に遭った『震災被害経験者』」は次の参考データによって抽出しました。
【参考データ】過去の震災で経験した被害:大震災経験地域では「家具や家電製品の転倒」が最多で半数以上
Q.(過去に震度5強以上の地震を経験した方)あなたは過去に経験した大地震で下記のような被害に遭遇したり経験を余儀なくされたりしたことがありますか。あてはまるものをすべて選んでください。(複数回答)
過去に震度5強以上の地震を体験した人のうち、比較的多くの人が遭遇した被害は「家具や家電製品の転倒」(45.5%)、「ライフライン(電気、ガス、水道)が丸3日間以上停止」(34.3%)、「建物外壁や柱の損傷」(32.9%)、「住居内の壁の損傷」(26.3%)、「丸3日間以上排水口やトイレから水を流せなかった」(20.9%)、「エレベーターの停止、閉じ込め」(15.6%)でした。
※上記の調査結果のポイント1で比較した経験者は、この設問でいずれかの被害を選んだ人です。
2.経験者から学ぶ 災害を想定して行うこと ~災害発生を想定した事前のシミュレーションが大事~
Q.あなたが災害を想定して行ったことで、次の中からあてはまるものをすべて選んでください。(複数回答)
・経験者と非経験者を比較したところ、両者の差が大きい行動は「家族で災害発生時の想定や行動を話し合った」(20.7%、差7.0%)、「家族と災害時の集合場所や連絡方法を確認した」(25.4%、差6.4%)であり、経験者は非経験者に比べて、家族と災害時の対策について話し合い、確認している割合が高いことが分かりました。
・いずれの行動も実施率が高いとは言えず、マンション居住者に対して、災害を事前にシミュレーションして対策する重要性について、いっそうの普及啓発が求められると言えます。
3.経験者から学ぶ 災害発生時の初動 ~災害時のファースト・アクション~
Q.あなたが在宅の際、もし今から30秒後に震度6弱以上の地震が起きることが分かったとしたら、あなたはそれまでの間に何をしますか。それぞれ自由にご記入ください。わからない場合は、「わからない」とご記入ください。(自由回答)
・(図4)非経験者は、「わからない」など「お手上げ」となるような回答が19.4%と、経験者の12.0%より7.4%(1.6倍)も高く、経験者は行動を具体的に回答している傾向があります。これは、経験者は過去の震災被害の体験から得た教訓・知見をもとに、地震を想定した具体的な行動の想定(シミュレーション)ができている一方で、非経験者は、どのような被害をどのような行動によって防ぐべきかが、体験として分かっていないためだと考えられます。
II. マンション居住者の潜在的な「共助」意識は高い。だからこそ大事なマンションコミュニティー
マンション単位で行う「共助」については、全体的な傾向として、近隣世帯に対する潜在的な共助意識は高く、さらに大規模マンションほど、その傾向が高いことが分かりました。また、管理組合が行う災害対策についても、中小規模のマンションよりも大規模マンションの方が、認知度が高い結果となりました。このことから、マンションの規模(戸数)が影響を与えることや、管理組合が、積極的に行事やイベント、避難訓練などを開催し、防災を啓発することで、共助意識が高まる可能性が示されました。
4.「近隣世帯を助けようとする意識」は 78.6%。潜在的な共助意識の高さ
Q.次の選択肢について、あなたの行動やお考えにあてはまるものどちらかを選んでください。(単一回答)
・近隣世帯との関わり方に対する全体の平均値としては、(図5)「災害発生時に近隣世帯を助けようとする意識」は78.6%あり、(図6)「災害発生時に近隣世帯が助けてくれることへの期待」の44.2%に対して、マンション居住者は近隣を助けようとする共助意識が比較的高くなっています。
・マンションの戸数別にみると、500戸以上のマンションでは、(図5)「助けようとする意識」は83.4%、(図6)「助けてもらえる期待」は49.7%とともに最も高いです。これは、500戸以上のマンションが(図7)「管理組合のイベントや行事への参加」(52.4%)や(図8)「管理組合や自治会の防災・避難訓練への参加」(50.3%)の参加率が最も高いことが影響していると考えられます。
・大規模マンションは、管理会社のスタッフが常駐するケースも多いため、管理組合による防災イベントの運営やマネジメントの体制が機能しやすいことも一因として挙げられます。
・この結果から、500戸以上の大規模マンションは管理組合が積極的に行事やイベント、避難訓練などを開催しているケースが多く、それにより共助意識が高まったと考えられます。
・これらのことから、相互に助け合う意識の醸成には、良好なマンションコミュニティーの形成が有効と考えられます。
5.知っていますか?お住いのマンションの災害対策 ~規模による意識の違い~
Q.あなたは現在お住まいのマンションの管理組合では、「建物の耐震性診断の実施」、「災害に備えた水・食料、生活用品や機器などの備蓄」、「災害対策マニュアルの策定」の取り組みを行っているかどうかご存じですか。当てはまるものを選んでください。(各単一回答)
・調査結果のポイント4で確認したように、大規模マンションは管理組合や自治会が積極的に行事やイベント、避難訓練などを開催しているケースが多く、それが防災意識向上に繋がっているためだと考えられます。
・マンションの管理組合が行う災害対策の認知状況について、「具体的な内容を知っている」と答えた割合が最も高いのはいずれも500戸以上で、(図9)「建物の耐震性診断の実施」は42.8%(全体との差12.8%)、(図10)「災害に備えた水・食料、生活用品や機器などの備蓄」は40.5%(差15.7%)、(図11)「災害対策マニュアルの策定」は55.3%(差12.5%)でした。
災害を正しく想定し適切に備える。まずは“生き残る”ための準備を。
「自助・共助」によるマンション防災の強化は “コスト”ではなく“バリュー ” 。
<目黒公郎氏の解説>
(東京大学生産技術研究所教授、都市基盤安全工学国際研究センター長)
今回の調査結果から、震災体験の有無にかかわらず、マンションに住まう人々全般の防災に対する意識や備えが、思った以上に不足している状況が明らかになりました。
近年の震災の経験を踏まえ、防災に対する考え方が、直後には機能しにくい行政による「公助」から、個人や家族で対応する「自助」と近隣で団結し助け合う「共助」を重視する方向に変わりつつあります。
現在わが国は大きな地震が頻発する時期を迎えており、いつ大地震が起きてもおかしくありません。効果的な防災対策の実現には、災害時に直面する状況の理解が不可欠です。理由は、人間は想像できない状況に対して、備えたり対応したりすることが出来ないからです。もちろん当事者意識も持てません。ゆえに、地震発生時の季節や天候、時刻や居住環境、立地・周辺事情、さらに時間経過とともに変化する災害状況を正確に想像する力「災害イマジネーション」が必要になるのです。
日頃から災害時の状況をシミュレーションする習慣を持ち、より精度の高い状況認識に基づいて、世帯やマンションごとでも変わる準備すべきコト・モノを具体化し、実効性の高い事前対策を備えておくべきです。
その際には、自分と家族の身体と生命を守る。つまり“災害発生時に生き残る”ことを最優先に考えること。
家具・什器の転倒やガラスの破損・飛散防止。安全確保のための防災用品の常備。家族間での初期行動や安否確認方法の共有。マンション周辺の被害予測に則ったより危険性の低い避難場所・経路の確認などが大切です。
住まいの条件や家族構成でも変わる被災後に必要となる備蓄や準備も、災害時用に特別に用意するのではなく、日常生活用の常備品を循環させて活用する循環型備蓄として、効率的に確保・更新していくべきです。
プライバシーや防犯などの観点から住民同士が顔を合わせにくい設計のものが増えつつあるマンションでは、特に「共助」が課題となります。管理組合や自治組織による定期的な防災訓練の実施と参加を促進する、住民同士が交流できる機会を増やす、といったコミュニティー意識の醸成に向けた活動。さらには有事の際に、設定した対策・計画をきちんと運営する体制や外部からの支援をスムーズに受け入れるためのマネジメントスキルも求められます。
災害対応力の高いマンションは、そこに住むこと自体がブランドとなり、経年による資産価値の低下も起こりにくくなります。マンションにおける防災対策の強化は、今やコストから“バリュー”へと確実に変わりつつあります。
正しい予測と自覚に基づき、マンション単位での「共助」、世帯単位での「自助」の視点から最適な防災対策を考える『戸別防災』(こべつぼうさい)が安心・安全への第一歩なのです。
・東急コミュニティーの防災支援活動について
東急コミュニティーは1970年の設立以来、マンション、ビル、商業施設や公共施設など、多様な施設の管理・運営を手掛ける総合不動産管理会社です。マンション管理戸数については施設管理を含めると50万戸超、ビル管理では1,100件以上と、業界トップクラスの実績があります。
管理組合運営や建物管理だけでなく、お客さまが安心・安全で快適なマンションライフを生涯にわたって過ごせるよう、ライフタイムマネジメントの考え方に基づき、住まいと暮らしを支えるサービスの提供に力を入れ、お客さまが必要なときに最適なサービスをお選びいただけるように、ライフステージや季節に即したメニューなど、よりよいサービスのご提供を目指してまいりました。
その中で防災に関する取り組みとしては、2008年よりマンションの災害対策支援サービス『対災力(たいさいりょく)』を、業界に先駆けてスタートし、これまでに管理受託する管理組合(約5,000組合)に対して「地震対策マニュアル」の整備提案を実施してまいりました。また、防災備蓄品の備えや、訓練の企画・実施、対策の検証を行うPDCAサイクルの提案や、各マンションの特性や事情に合った提案やアドバイスを推進しています。
今回の調査結果を踏まえ、マンション居住者の「自助・共助」意識を高め自立した実効性の高い防災活動を実現するため、今後も積極的な提案を行ってまいります。
主な支援プログラム】
●「災害対策ガイド」ブックの提供
●防災計画・避難訓練などの提案・アドバイス
→対策マニュアル・訓練ガイドの提供
●各種防災グッズの開発・紹介・販売
●備蓄品の棚卸し・提案 など
・調査方法
・調査実施日:2017年10月3日~10月5日
・インテージの調査モニター:30代~60代以上、男女3128名、マンション所有・居住者(基本属性で抽出)
エリア1)震度5強以上の大地震経験地域のマンション住人(1543サンプル)
<1995年以降の最大震度6弱以上を観測した地震で震度5強以上となった自治体(市のみ)>
青森県(八戸市)、秋田県(湯沢市、秋田市、大仙市、横手市)、山形県(上山市、尾花沢市、米沢市)岩手県全域、宮城県全域、福島県全域、茨城県全域、栃木県、全域、群馬県全域、山梨県中央市、新潟県(小千谷市、長岡市、十日町市、柏崎市、上越市、三条市、南魚沼市、燕市、見附市)長野県(長野市、中野市、飯山市)、静岡県(御前崎市、牧之原市、焼津市、伊豆市、富士宮市、菊川市、袋井市、静岡市、伊豆の国市)、石川県(七尾市、輪島市、珠洲市)、滋賀県(彦根市)、兵庫県(神戸市、芦屋市、西宮市、宝塚市、洲本市、淡路市、南あわじ市)鳥取県(境港市、米子市)、島根県(安来市)、岡山県(新見市)、広島県(広島市、呉市、廿日市市)、山口県(岩国市、柳井市)、愛媛県(今治市、松山市)、福岡県(福岡市、大川市、春日市、久留米市、柳川市、みやま市)、佐賀県(佐賀市、神埼市)、長崎県(壱岐市、南島原市)、熊本県(全域)、大分県(別府市、由布市、豊後大野市、日田市、竹田市)、鹿児島県(薩摩川内市、出水市)
エリア2)三大都市圏のマンション住人(1585サンプル)
<首都圏、関西圏、東海圏のうちマンション世帯率10%以上の都府県>
首都圏:東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県
関西圏:大阪府、京都府、兵庫県(神戸市、芦屋市、西宮市、宝塚市、洲本市、淡路市、南あわじ市除く)
東海圏:愛知県
<全体の回収状況>
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