世界の都市間における競争力を観測、比較、分析
東京 2018年4月3日 - 総合不動産サービス大手のJLL(本社: 米国シカゴ、CEO: クリスチャン・ウルブリック、NYSE: JLL、以下: JLL)は、 The Business of Citiesと共著で最新の都市比較インデックスレポート「世界都市の10類型 未来都市創生への道程」を発表しました。都市間比較による事業機会の判定をする「都市の科学」は、不動産戦略における選択をする上で、重要になっています。昨今では、成長力、生活しやすさ、スマートシティ、レジリエンス(強靭さ)、スキルなどにおける都市間の競争力が増しており、本レポートでは、不動産投資家やデベロッパー、企業に提供しうる各都市の成長過程、課題、命題、機会を観測し、新たに4つのカテゴリーと10種類の都市グループを特定しました。
確立された世界都市:
最もグローバル化した都市で、企業・資本・人材の集中度が最も高く、競争力の優れた大都市
1.「ビッグ7」:ロンドン、ニューヨーク、パリ、シンガポール、東京、香港、ソウル
世界の商業用不動産への投資額の1/4近くを占めるこのグループは、流動性の高い不動産市場と独自のソフトパワー(惹き付ける力)により、多国籍企業やクロスボーダー投資家が最初に注目する都市。一方で継続的な成長維持が大きな課題となっている。
2.「挑戦者たち」:ロサンゼルス、上海、北京、アムステルダム、シカゴ、サンフランシスコ、トロント、マドリード、シドニー、ワシントンDC
直近の市況サイクルで不動産投資が最も急速に増加した都市グループ。国内の経済圏と海外の経済圏へのゲートウェイとしての接続性、効果的な都市規模と市場の大きさ、世界資本からの信頼度、潤沢な人材、多数の都市における多様な産業など上位都市が持つ都市的資産を拡大している。
新たな世界都市:
都市運営の行き届いた中規模都市で、不動産投資や企業、人材の誘致で敏捷性に優れており、インフラ、生活の質の高さとニッチな専門性を提供しうる都市
3.「イノベーター」:オースティン、ベルリン、ボストン、デンバー、ダブリン、ミラノ、ミュンヘン、サンディエゴ、シアトル、シリコンバレー、ストックホルム、テルアビブ
イノベーションや起業家精神を育む科学や技術、ビジネス風土について世界トップクラスの能力を有しており、都市の経済規模との比較における不動産投資額が最も大きなグループ。一方で、より万能な都市になるために必要な住宅、インフラ、アーバンライフスタイルにおけるキャパシティの問題を抱えている。
4.「ライフスタイルシティ」:オークランド、ブリスベン、コペンハーゲン、ハンブルク、ヘルシンキ、メルボルン、オスロ、バンクーバー、チューリッヒ
過去数回の市況サイクルの間に賃料が最も上昇したグループ。生活の質の高さと都市の国際的な魅力が最も強力なブランド力となっており、コンパクトで中密度の都会生活、秀逸な公共スペースや公共サービス規格が、高等教育、クリエイティブ産業、観光、科学などの主要輸出市場の成長を後押ししている。
5.「インフルエンサー」:バルセロナ、ブリュッセル、フランクフルト、ジュネーブ、京都、マイアミ、ウィーン
2000年以降のオフィス賃料の変動幅が小さく、安定した不動産市場を有する都市が多く含まれるグループ。多国籍機関や観光事業、交易機能の場を提供、世界的・地域的な影響力を有している。政治的・地理的条件に恵まれ、世界的な役割とアイデンティティを継承しており、政府間や法律・貿易関連の国際的な意思決定の調整や促進に関わる役割を果たしている。
新興世界都市:
より大きな新興国の経済・政治の中心地で、拡大する国内の需要と消費に応えることで急速に成長し、国際的な貿易と資本のゲートウェイの役割も果たしている都市
6.「メガハブ」:バンコク、デリー、イスタンブール、ジャカルタ、ヨハネスブルク、マニラ、メキシコシティ、モスクワ、ムンバイ、サンパウロ
不動産投資の受け入れ地としての実力はまだ劣っており、今後の不動産透明度の向上が求められるグループ。新興国の主要ゲートウェイであるとともに意思決定の中心地であり、ビジネスや金融サービスに特化した都市。また観光客や、イベント、国際会議、イノベーション機能の誘致を争えるプロファイルと規模を有する。
7.「エンタープライザー」:バンガロール、広州、ホーチミン市、クアラルンプール、深セン、台北
直近の市況サイクルでは、世界で最もダイナミックな不動産市場に含まれており、「新興世界都市」の他グループよりも不動産投資家の誘致に成功しているグループ。ビジネスや起業のハブ都市で事業機会が創出される主要都市。サービス業に特化していることが多く、国内経済においては最大規模の都市であり、ここ数年はビジネス環境の優位性を積極的に活用している。
8.「パワーハウス」:成都、重慶、杭州、南京、蘇州、天津、武漢、西安
「新興世界都市」の中でオフィス賃料の上昇率が最も高いグループ。主に中国都市で構成されている。国家の支援を享受している都市で、世界的な製造業およびバリューチェーンに組み込まれている一方で、その成長は世界の経済、技術、および商品相場のサイクルに大きく依存しており、価格のみならず産業の集積度においても競争力を維持することが急務。
ハイブリッドと成長エンジン
9.「ハイブリッド」:アブダビ、ブカレスト、ブダペスト、ケープタウン、ドーハ、ドバイ、プラハ、サンティアゴ、ワルシャワ
不動産透明度を大きく向上させており、最近の市況サイクルでは商業用不動産のストック量を拡大させているグループ。「新興世界都市」と「新たな世界都市」の両方の性質を併せ持つ中規模都市で、同等の競合都市よりも生活しやすさの点で優れている。
10.「国内成長エンジン」:アトランタ、ダラス、ヒューストン、名古屋、大阪
不動産市場透明度を大きく向上させ、不動産投資額においても世界の上位にランクされる都市グループ。安定的な先進国にみられる都市郡で、大規模な国内市場へのアクセスの恩恵を受け、安定した需要があり、競合相手が比較的少ない都市。自国内の経済における位置付けが高く、今後の中期的な耐久性・持続性が保証されている。都市クオリティ、企業や交易セクターをさらに強化して新しいモデルへのシフトに成功すれば、徐々に「新たな世界都市」へと成長する可能性がある。
JLLグローバルリサーチ ディレクター ジェレミー・ケリーは次のように述べています。
「世界の都市では、専門性、人材やビジネスを呼び込む魅力度、不動産のスタイルや質においてより共通した特性や優先的な取組みが見られるようになっています。都市間の競争力がもたらす不動産市場への影響を測るには、今までの伝統的な分析に加えて、新たな視点から各都市の不動産におけるダイナミズムを分析することが重要です」
JLL日本 リサーチ事業部長 赤城 威志は次のように述べています。
「高度にグローバル化した世界において都市競争力の分析が以前にも増して重要になっています。JLLシティリサーチレポートの最新版である本書では、世界最大の経済規模を有する“東京”が最上位の都市グループの一角として位置づけられました。しかし、これらの都市グループに迫る勢いで成長している世界都市群があり、現在のプレゼンスを維持向上する努力・戦略が必要となっています。
また今回新たに定義細分化された都市グループに、日本から“大阪”、“名古屋”、“京都”が選出されました。それぞれの特性に応じて世界的な都市競争での優位性を発揮している状況が読み取れます。このほか“福岡”を筆頭に中核都市の成長が期待される日本では、グローバルの資本・企業・人材を魅了する取組がさらに重要となっているものと考えられます」
JLLについて
JLL(ニューヨーク証券取引所上場:JLL)は、包括的な不動産サービスをグローバルに提供する総合不動産サービス会社です。フォーチュン500に選出されているJLLは、不動産オーナー、テナント、投資家の皆さまのアンビション実現を支援します。2017年度は、総売上高79億米ドル、年間の手数料収入は67億米ドルに上ります。また、約4億2,300万平方メートル (約1億2,800万坪)の不動産ポートフォリオを管理し、1,700億米ドルの取引を完了しました。2017年末現在、世界80ヵ国、従業員約82,000名以上、300超拠点で展開しています。JLLグループで不動産投資・運用を担当するラサール インベストメント マネジメントは、2017年12月31日時点で総額581億米ドルの資産を運用しています。JLLは、ジョーンズ ラング ラサール インコーポレイテッドの企業呼称及び登録商標です。
http://www.jll.comJLLのアジア太平洋地域での活動は50年以上にわたり、現在16ヵ国、96事業所で37,000名超のスタッフを擁しています。JLLは、2016年インターナショナル・プロパティ・アワードにて、グローバル、アジア太平洋地域における「最優秀不動産コンサルタント賞」を受賞しました。また、リアル・キャピタル・アナリスティックスより、6年連続でアジア太平洋地域のトップ投資アドバイザーに選出されています。
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