コロナとの共存を目指し、大東建託がオンライン開催
大東建託株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:小林克満)は、2020年7月30日(木)に、アフターコロナが、居住地域、人口動態、会社所在地、住宅、ひいては賃貸経営にどんな影響を与えるのかについての議論を目的に、 「アフターコロナの不動産市場と働き方の未来」をテーマとしたオンラインシンポジウムを開催しました。
大東建託株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:小林克満)は、7月30日(木)、「アフターコロナの不動産市場と働き方の未来」をテーマとしたオンラインシンポジウムを開催しました。
本シンポジウムは、オンライン会議ツールを使用し、本年6月にオープンした「ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場」より生配信しました。パネリストには、不動産研究の分野から日本大学教授・東京大学特任教授・麗澤大学特任教授の清水千弘氏、人事や雇用管理の分野から神戸大学経済経営研究所准教授の江夏幾多郎氏をお招きし、当日は約400名の方々にご参加いただきました。
■開催背景
2019年末から始まったコロナ禍は世界中に広まり、収束には数年を要するという意見もある中、飲食業・サービス業を中心に、雇用に大きな影響が出ています。ホワイトカラーの多くはテレワークが中心となり、働き方も大きく変わりました。そんな中、本シンポジウムでは、アフターコロナが、居住地域、人口形態、会社所在地、住宅、ひいては賃貸経営にどのような影響を与えるのかについて、不動産研究と働き方研究の両面からの視点で議論されました。
●当社代表取締役社長の小林による開会の挨拶
『新型コロナウイルスが発生してから、私たちの生活は大きく変化しており、大東建託の事業領域においても、大きな影響を受けています。新型コロナウイルスの猛威をもって、逆に働き方自体が大きく改革をされている印象も強く持っています。この働き方の変化は、働く現場だけではなく、我々の暮らしや住まいにも大きな影響を与えています。
こうしたコロナ禍において、働き方・住まい・暮らしは何が変わっていくのか、何が変わらないのか、我々は現実を受け止めて、真剣に考えていこうと思っています。今回のシンポジウムの開催が、これからの未来を考えていくきっかけとなれば嬉しく思います。』
●当社賃貸未来研究所・AI-DXラボ所長の宗による趣旨説明
『新型コロナウイルスの影響によって不動産市場においては、都心のタワーマンションの価格暴落や、郊外の物件の人気上昇、そして地方への移住増加などの影響がもたらされると言われています。都心のオフィスについても、テレワークの普及により不要論調も出てきています。
そういった中で我々が考えたいのは、「データと解釈」そして「事実と意見」を区別しながら物事を考えていくということです。未来というのは過去の延長にあるとは限らず、正しく予測することはほぼ不可能ではないかと言われています。それでも未来を考えていくということは、我々の大きな責任ではないかと考えています。専門家の研究成果からわかることを確認しながら、解釈や意見についてディスカッションをしていきたいと思います。』
■第1部 講演 『コロナショック後の不動産市場の未来』
清水 千弘 氏
日本大学スポーツ科学部教授
東京大学空間情報科学研究センター特任教授
麗澤大学AIビジネス研究センターセンター長
『自身の研究に基づいて、新型コロナウイルスが不動産市場にどういう影響を与えるかを考えると、これが「ショック」なのか「構造変化」なのかを考えなければいけないと思っています。「ショック」というのはある一定の時間経過後、元の状態に戻るというような状態、「構造変化」というのは今とは全く違う世界へ、世界そのものが変わってしまう状態であると考えます。今まであった常識と違う常識がそこに生まれてくるということです。
どちらなのかは、実はこの瞬間には分からないもので、経済学でいうと「短期調整」か「長期調整」のどちらかだということになります。今から5年、10年経ったときに初めて「構造変化」があったということが分かるかもしれないし、単なる「ショック」だったとなるかもしれません。
今回のコロナショックが、構造変化を起こすだけの大きなイベントなのかどうか。短期的なショックであるならば、どれくらいの時間をかけて正常な状態に戻るか、ということに意識を向ければいいのですが、長期的なものであるならば、少子高齢化、働き方、住まいなどによって、マーケットが変わるということになります。未来は予見するべきですが、むしろどう作っていくのかをみなさんと一緒に考えていきたいと思います。』
■第2部 講演 『リモートワークの可能性を探る:4000人実態調査を踏まえて』
江夏 幾多郎 氏
神戸大学経済経営研究所准教授
『リモートワークのメリットは、本来働くことができなかった人が在宅勤務などで働けるようになることや、勤労者の通勤の手間が省けて時間が節約できることです。これは、人的資源を量的に確保することや、質的に多様な人材を活用することに繋がります。デメリットは、対面の方が色々な調整がうまくいくことや、創造的なやり取りができるということです。
他にも、家と職場が混然一体となっていてストレスを感じやすくなること、上司からの評価や管理に対する不安を抱えるなどのリスクがあげられます。言葉では伝えにくい知識を伝えることや、経験を通じて知識を得ることは、リモートワークでは不得手だと言われています。これはリモートワークの技術の問題なのか、単純に人が慣れておらず使い方が悪いだけなのか、慎重な検討が必要です。つまり、技術的な制約と、慣れによってある程度解消できる部分の両方が入り混じっているのが現状です。
これらの要因から、まだまだテレワークの使い勝手は悪いと言えます。これから、リモートワークを使ってみたが難しかったとするのか、あるいは、慣れてきて良い部分も見つかった、とニューノーマルに舵を切れるのかが、これからの企業や就労者にとって分かれ目になってくると考えます。』
■第3部 パネルディスカッション 『アフターコロナの不動産市場と働き方の未来』
●「テレワークの実施率は結局何%くらい?これから定着していくの?」
宗『実際にテレワークをやっている人の比率が、実は都市部と地方、そして都市部の中でも大きくバラつきがあると思います。それは実際何が原因なのか。そして、これからテレワークがどれだけ定着していくのか。職種や居住地、年収による違いもみられますので、調査の解説をお願いします。』
江夏『今年の4月時点で、テレワークを全くやっていない人が7割強います。3割弱の方は何らかの形でテレワークをやっています。このサンプル特性を分析すると、テレワークをやっている人の比率は、職種、居住地、年収、学歴の影響が大きいことが分かりました。他にも、企業が変化の対応にどれだけ積極的かというところにも影響がありました。
年収については、複数の影響要因を同時に考慮して重回帰分析を行いました。その結果、年収による影響からわかるものは、実は企業の規模や立地が原因で、年収の影響は見かけだけで影響しないというのが私達の分析結果になります。
そして、テレワークが定着するかということですが、定着するだろうという希望的観測も含めると4分の1くらいで、4分の3くらいはそんなに定着しないだろうと思っています。やはり日本企業はこの30年ほど変化というものに対して前のめりじゃなかったところがあります。そう考えると、緊急事態宣言の解除により元に戻る動きもあるので、企業の意思決定をテレワークの方に舵を切るというのは、なかなか難しいだろうというのが個人的な現状理解です。』
●「不動産市場は人口、世帯数、就業人口の影響が大きい?アメニティ集積は人口増加をもたらす?」
宗『不動産の市場というのは、就業人口の影響が大きいのでしょうか。また、アメニティの集積との相関について詳しく説明をお願いします。』
清水『1990年代は、二次産業などの製造業を中心に都市も経済も成長してきました。そうすると、人が集まってそこに産業をおこし、生産をして職業ができあがり、その周りに人が集まってきました。しかし産業が大きく変わってきて、今、経済を牽引しているようなGAFA(ガーファ)などが世界経済全体に貢献し始めることにより、当時の都市の作られ方や、働き方が馴染まなくなってきています。
そうすると、家の選択も変わってきます。クリエイティブな人材がどういうところに集まるかと考えると、アメニティが集積され、消費の機会がすごく大きいところになります。なぜかというと、人間の根底の中には、幸せになりたいという気持ちがありますよね。幸せになるためにどういうところに住むのが一番いいのか考えるわけです。例えばレストランなら、フレンチも中華もイタリアンも選べるような、色んな消費ができるところに人が集まるわけです。そして、その中で職業を選んでいく。もしくは、働く場所や企業を選んでいくことになります。こうした動きがアメリカから始まり、ヨーロッパに広がり、今後は日本でもそういった傾向が強くなるのではないかと考えています。』
■閉会挨拶
●当社代表取締役社長の小林による閉会の挨拶
『今回は、様々な角度からご意見や調査結果を報告いただきました。リモートワークひとつをとっても、するのかしないのか、という議論が盛んにされますが、そうではなく、一つの選択肢として考えればいいのではないかと考えています。二項対立的に考えがちですが、これをきっかけに、二つの領域を上手に活かしていければと思っています。
これから色々な変化を捉えながら、我々は何をどう変えていくのか、変えていかないのかを実践していきたいと思っています。またこうした機会があれば、みなさんにお会いできる機会を作ってまいります。』
■オンラインシンポジウム概要
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