グローバル都市不動産研究所 第7弾(都市政策の専門家 市川宏雄氏監修)
投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(本社:東京都渋谷区、以下GLM)は、(1)東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、(2)不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授 市川宏雄 氏を所長に迎え、「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」を2019年1月1日に設立しました。(研究所URL:
https://www.global-link-m.com/company/institute/)
同研究所では調査・研究の第7弾として、2020年に吹き荒れているコロナ禍によって、東京の不動産市況はこれまでどのように推移したのかを振り返り、コロナ禍2年目に突入する2021年にはどうなるかを予測しました。
===分析結果ダイジェスト===
TOPICS1. 【不動産市況の振り返り】2020年の東京はマンション堅調、オフィスやや弱含み
・新築マンションの新規販売戸数は緊急事態宣言を受けて一時的に供給が絞り込まれたものの、宣言解除後の6~7月には前年同月比2割程度減と回復傾向をみせ、10月には51.5%増と大幅に増加した。
・中古マンション市況は新築マンションよりもさらに早い回復傾向がみられ、成約平方メートル 単価も、3~4月を除いておおむね前年同月比でプラスを維持しており、堅調に推移している。
・一方、東京都心5区のオフィスビル平均空室率は5月以降徐々に悪化し、特に既存ビルの空室率が悪化。渋谷区、千代田区、港区では平均賃料が低下傾向に転じている。
TOPICS2. 【地価動向の振り返り】東京都区部主要地区は賃貸店舗・オフィス需要軽減が影響
・国土交通省の地価LOOKレポートによると、2020年第3四半期(2020年7月1日~10月1日)の東京都区部主要地区の地価動向は、横ばいが16地区、下落が8地区となった。
・渋谷区ではこの地区に集積するIT企業等のテレワーク導入拡大に伴うオフィス需要の減少と、賃貸店舗需要・収益の減少の双方が影響していると分析。
・一方、住宅系地区についてはマンション需要や開発需要は底堅く、地価動向は横ばいで推移している。
TOPICS3. 【2021年の展望】世界から注目される「東京」、感染拡大が収まれば回復の期待も
・TBD景気動向調査によると、東京都の不動産業の景気動向は緩やかな改善を予測している。
・JLLの調査によると、2020年1-9月期の東京の商業用不動産投資額が193億ドル(約2兆円)と世界首位となった。欧米各都市よりもコロナ禍による経済的な影響が少ない東京の不動産市場が、海外の機関投資家などから選好されていると分析されている。
・この一年間のデータをみれば、東京の不動産市況、とりわけマンション市況は堅調に推移し、感染拡大が収まる状況になれば力強く回復する、ということが改めて確認された。
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TOPICS1. 【不動産市況の振り返り】2020年の東京はマンション堅調、オフィスやや弱含み
今年の春に日本を直撃したコロナショックは秋になっても鎮まることがなく、2020年はコロナ禍が吹き荒れた一年となりました。この一年間、東京の不動産市況はどのように推移し、これからどうなると予測されるでしょうか。まず、東京都区部のマンション、オフィス市況についてみていきましょう。
・新築マンション、中古マンション市況とも底堅く推移
新築マンションの新規販売戸数は、2020年2~3月頃から若干減速傾向にありましたが、政府の緊急事態宣言を受けて、4月には前年同月比42.1%減、5月には69.9%減と、供給が一気に絞り込まれました。しかし宣言解除後の6~7月には2割程度減と回復傾向をみせました。感染拡大の第2波が訪れた8月に再び51.0%減となったものの、9月には早くも改善をみせ、10月には51.5%増と大幅な増加になっています。
このように供給面で細かい調整がなされたことで、契約率は3月以降に一度も6割を割り込むことなく推移し、1平方メートル 当り分譲単価も前年同月比でプラスを維持し続ける結果となっています【表1、図1】。
中古マンション市況は、新築マンションよりもさらに早い回復傾向がみられます。中古マンション成約件数は、4月に前年同月比54.4%減、5月に38.9%減と急減しましたが、7月にはほぼ前年並みに回復し、8月には12.9%増と大きく改善しました。10月には32.7%増と活況を呈しています。成約平方メートル 単価も、3~4月を除いておおむね前年同月比でプラスを維持しており、堅調に推移しています【表2、図2】。
・東京都心5区のオフィスビルはやや弱含み
東京都心5区のオフィスビル平均空室率は、これまで1%台で推移してきましたが、5月以降徐々に悪化し、11月には4.33%(前月比0.4ポイント増)まで上昇しました。その内訳は、新築ビル2.89%、既存ビル4.38%であり、既存ビルの空室率がより悪化しています。既存ビルに、オフィスの集約や縮小の動きによる解約の影響がより現れたものと思われます。
これに伴い、平均賃料も7月に2万3,014円とピークを付けましたが、その後、低下をはじめ、11月には2万2,223円(前月比0.94%、211円減)となりました【図3】。
それぞれの区ごとにみると、空室率では渋谷区、港区が大きく悪化し、堅調であった千代田区も7月以降やや上昇傾向にあります。こうした空室率上昇を受けて、渋谷区では4月から、千代田区、港区でも7月前後から平均賃料が低下傾向に転じています【図4~5】。
このように、新築・中古マンション市況は回復傾向がみられ、堅調に推移していますが、一方、オフィス市況は、夏以降やや弱含みで推移していると言えます。
TOPICS2. 【地価動向の振り返り】東京都区部主要地区は賃貸店舗・オフィス需要軽減が影響
国土交通省が四半期ごと(毎年1月・4月・7月・10月)に公表している「地価LOOKレポート」によると、2020年第3四半期(2020年7月1日~10月1日)の東京都区部主要地区の地価動向は、横ばいが16地区、下落が8地区となりました。その内訳は、商業系地区は横ばい9地区、下落8地区、住宅系地区は7地区すべてが横ばいとなっています【図6】。
前回調査(2020年4月1日~7月1日)では、商業系地区の銀座中央、新宿三丁目、歌舞伎町、上野の4地区が下落に転じましたが、今回はこれらに加え、丸の内、有楽町・日比谷、渋谷、池袋東口の4地区が下落傾向となったのが特徴と言えます。レポートでは、丸の内地区、有楽町・日比谷では、オフィス賃料は概ね横ばいではあるものの、来街者の減少によって賃貸店舗需要や収益性が低位で推移していることが影響し、また、渋谷では、この地区に集積するIT企業等のテレワーク導入拡大に伴うオフィス需要の減少と、賃貸店舗需要・収益の減少の双方が影響していると分析しています。
一方、住宅系地区については、例えば、佃・月島で新築及び中古マンション売買取引は緊急事態宣言解除以降に徐々に回復、豊洲や品川で分譲マンション需要は底堅い、二子玉川で分譲マンション売買取引は回復基調といったように、調査地区7地区(番町、佃・月島、南青山、品川、豊洲、有明、二子玉川)のいずれにおいてもマンション需要や開発需要は引き続き底堅く、地価動向は横ばいで推移しています。
TOPICS3. 【2021年の展望】世界から注目される「東京」、感染拡大が収まれば回復の期待も
TDB景気動向調査(帝国データバンクによる景気DI)によると、東京都の不動産業の景気判断は、4月に22.5と急速に悪化しましたが、このときを底に徐々に持ち直しをみせ、直近の11月時点で38.4まで回復しました。今後の見通しでも3カ月後に39.3、6カ月後に39.6、1年後に40.8と緩やかな改善を予測しています【図7】。
また、ジョーンズラングラサール(JLL)の調査によると、2020年1-9月期の東京の商業用不動産投資額が193億ドル(約2兆円)と、世界首位となったことがわかりました。前年同期の4位から躍進しており、欧米各都市よりもコロナ禍による経済的な影響が少ない東京の不動産市場が、海外の機関投資家などから選好されていると分析されています【表3】。
この秋までに持ち直しを見せ、底堅く動いていた東京の不動産市況ですが、11月下旬ごろから第3波ともいうべき感染拡大がまた生じてしまいました。仮に緊急事態宣言(ロックダウン)のような状況まで事態が悪化すれば、不動産市況にも一時的にマイナスの影響を与える可能性もあります。しかしながら、この一年間のデータをみれば、東京の不動産市況、とりわけマンション市況は堅調に推移し、感染拡大が収まる状況になれば力強く回復する、ということが改めて確認されました。
世界各国で進められたワクチン開発もようやく目途が立ち、来年前半には日本への供給も期待されます。新型コロナウイルス感染の終息を迎えるようになれば、東京の不動産市況も再び活況を取り戻すことができるだろうと予測されます。
都市政策の専門家 市川 宏雄 所長による分析結果統括
~都心のオフィス需要は一時的に下がるも、マンション需要は底堅い~
今年の2月からすでに10か月が経とうとする新型コロナ禍のなかで、人々の働き方の変化が起き、居住形態や居住場所への影響が言われてきました。また、経済の低迷による不動産市況も心配されてきました。人々が住み替えで東京を離れていくのではないか、働く場所が多様化して都心のオフィス需要が下がっていくのではないか、この2点が大きな懸念事項でした。今回、この2つの懸念についてその方向が見えてきました。
住まいについて言えば、確かに郊外に少し移り始めている傾向が見えてきています。ところが、それによって今まで続いてきた住まいの都心回帰の流れが必ずしも変わるのではないということが分かりつつあります。マンションの取引は緊急事態宣言解除後に一時回復し、感染拡大の第2波で8月に半減したものの、9月からは改善をみせ、10月には大幅な増加となっています。新築、中古ともに都心のマンションを中心とした根強い人気があります。
オフィスは経済の低迷が続く中で、需要がやや下がり始めています。夏まではあまり大きな変化がみられなかった空室率は、11月に新築ビルで2.89%、既存ビルで4.38%とやや上昇してきました。しかし、リーマンショック後に10%近くなったことを考えれば、それほど悪くはないという見方もできます。
地価については人気のある住宅地では落ちることなく横ばい、東京への不動産投資が世界で一位になったことなどを考えれば、この先数か月間のコロナによる経済の低迷は予想されるものの、その後の回復の期待ができるのではないかという楽観的な視点につながりそうなのが、今回の分析結果から見えてきます。
取材可能事項
本件に関して、下記2名へのインタビューが可能です。
・氏名 :市川 宏雄(いちかわ ひろお)
・生年月日:1947年 東京生まれ(72歳)
・略歴 :早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士。現在、明治大学名誉教授、日本危機管理防災学会・会長、日本テレワーク学会・会長、大都市政策研究機構・理事長など要職多数。
・氏名 :金 大仲(きむ てじゅん)
・役職 :株式会社グローバル・リンク・マネジメント 代表取締役社長
・生年月日:1974年6月2日(46歳)
・略歴 :神奈川大学法学部法律学科卒業。新卒で金融機関に入社。30歳の時に独立し、グローバル・リンク・マネジメントを設立。
※ご取材をご希望の際は、グローバル・リンク・マネジメントの経営企画課までお問い合わせください。
株式会社グローバル・リンク・マネジメント 会社概要
・会社名:株式会社グローバル・リンク・マネジメント
・所在地:東京都渋谷区道玄坂1丁目12番1号渋谷マークシティウエスト21階
・代表者:代表取締役社長 金 大仲
・設立年月日:2005年3月
・資本金:509百万円(2020年6月末現在)
・業務内容:投資用不動産開発、分譲、賃貸管理、マンション管理、仲介
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