スターツCAM株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:直井秀幸、HP:
https://www.starts-cam.co.jp/)では、26年にわたり培ってきた免震技術※1・耐震技術を活用し、歴史的価値のある貴重な建築物の改修・保存にも取り組んでいます。今回、新たに「ジャッキアップレス免震レトロフィット」工法(特許出願中)を開発し、国の登録有形文化財である築103年の「岡崎信用金庫資料館(愛知県・岡崎市)」に採用しました。また、築100年のレンガ倉庫を耐震技術を駆使し「弘前れんが倉庫美術館(青森県・弘前市)」として改修。その技術を評価いただき、一般財団法人 日本建築防災協会より「耐震改修建築・貢献者表彰」にて「耐震改修優秀建築賞」を受賞しました。
※1 スターツCAMの免震技術については資料1.をご覧ください。
◆築103年の有形文化財を保存するため、新工法を採用
国の登録有形文化財、岡崎市景観重要建造物となっている「岡崎信用金庫資料館」は、築103年のレンガ造り。鈴木禎次氏が設計した歴史的価値の高い建築物であり、以前の大規模補強からすでに40年近く経っていることから、耐震工事を行い、2020年12月に竣工しました。
既存建築物の外観、内装や設備などをできるだけ維持したまま耐震補強を行う場合、基礎部分に免震装置を組み込み、建物全体を免震構造に変える「免震レトロフィット工法」(2011年特許取得)が適しています。スターツCAMでは、同工法を、築80年以上の木造寺院である「池上・本妙院(東京都・大田区)」に適用した実績があります。(写真1)しかし、本工法を「岡崎信用金庫資料館」に適用すると大がかりな補強が必要となるため、追加の既存躯体の調査を行い、建物をジャッキアップしない工法を開発。外周の煉瓦壁の基礎部分に、小さな開口をあけ、薄いすべりタイプの免震装置を配置。その上に埋め込み式の薄いジャッキを設置。上部の建物と基礎の間を切断して免震化する工法です。本工法を採用することで約40%のコストカットを実現。さらに、2020年11月には特許を申請しました。
本工事により震度7の地震の際も、レンガの落下を含めた建物の損傷を防ぎます。
[岡崎信用金庫資料館 概要]
用途:資料館
旧用途:銀行・商工会議所
設計者:鈴木禎次
構造形式:レンガ造(一部 鉄筋コンクリート造)
建築面積:302 m²
階数:地上2階、一部3階建
開館開所:1917年(築103年)
改築:1950年、1982年
所在地:愛知県岡崎市伝馬通1-58
文化財指定:登録有形文化財
指定日:2008年3月7日
[写真1]
池上・本妙院本堂 免震補強工事
築80年の本寺院は財産的・意匠的価値が高いため「寺院としての意匠を損なわない」 「壁を増設しない」「使い勝手を変えない」といった条件のもと保存・継承すべく免震補強工事を実施し、2010年7月完成。災害時には地区住民の防災拠点になりうることも目標としました。
2011年に発生した東日本大震災の際も建物内の備品が倒れることはありませんでした。本工事は「国土交通省2009年住宅・建築物耐震改修モデル業」として採択されています。
◆築100年の倉庫を改修し誕生した「弘前れんが倉庫美術館」が、耐震改修優秀建築賞 受賞
「弘前市吉野町緑地周辺整備等PFI事業」において、国内で初めてシードル(リンゴの発泡酒)が大々的に生産された「吉野町煉瓦倉庫」(築100年、2015年7月より弘前市が所有)を芸術文化施設である「弘前れんが倉庫美術館」として改修・整備しました。改修にあたり、既存の部材を極力残し、外観・内観を保全しながら建物の美観を損なわずに設計・施工。耐震改修における構造設計と監理は、スターツCAM(株)スターツ免制震構造研究所(HP:
https://www.starts-sti.jp/)と株式会社大林組が担当し、下記の改修を施しました。
[美術館棟] 煉瓦壁PC鋼棒プレストレス工法を採用し、壁外周部の外観はそのまま生かすように配慮。また、床版の追加や屋根面の合板補強を施し、追加した鉄筋コンクリート造の耐震壁が十分性能を発揮する構造計画としました。また、鉄骨造と木造の屋根のトラス屋根組は既存のものをそのままに、鋼板を取り付けて補強しました。
[カフェ・ショップ棟] 木造の既存構造体が再利用できないほど朽ち果てており、唯一比較的健全だった正面の煉瓦造の既存外壁を残しながら新たに木造で計画しました。
本改修により、震度7の地震の際、建物を利用する不特定多数の人々の安全を守るために倒壊を防ぎます。上記の取り組みが認められ、一般財団法人 日本建築防災協会が主催の「令和2年度 耐震改修建築・貢献者表彰」において「耐震改修優秀建築賞」を受賞しました。
これからも、お客様と地域の皆様の課題解決のため、技術を進化させながら建築していくとともに文化の承継にも役立てるよう努めてまいります。
<審査評/一般財団法人 日本建築防災協会 ホームページ掲載の審査評より引用(
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/files/2021/01/M2020-10.pdf)>
吉野町煉瓦倉庫は酒造工場として 1923 年頃に建設され、1965 年以降は米備蓄倉庫等に利用されていた。近年は市民活動や展覧会に活用されるなど、町のシンボル的存在であり、弘前市が取得して PFI 事業により地域住民の交流機能を備えた美術館に改修された。耐震改修では、耐震性能が低く老朽化していた煉瓦倉庫に対し、外観や空間性を保存しつつ、公共施設への転用が図られている。建物は煉瓦造(一部、鉄骨造・RC 造・木造)の 2 棟が L 字に連結されている。煉瓦壁の補強には、壁の中央部に PC 鋼棒を挿入し、プレストレスを導入してせん断耐力を上昇させる方法が採られ、内外ともに煉瓦壁の美観が保全されている。小屋組には既存部材を再利用して倉庫らしさを残しつつ、適所に RC や耐震ブレース付き鉄骨のコア、鉄骨梁、補強間柱等を配し、剛床を構築して、大空間の展示室や吹抜を形成し、倉庫から美術館へ機能転化された。金色のチタンで葺かれた切妻屋根が保存に留まらない個性ある外観をつくりあげている。これは耐震改修が、長年活用され続けた建築の価値を共有し、官民一体で地域の拠点として活用することをもたらした好例であり、耐震改修優秀建築賞を受けるに値する。(郷田桃代)
<事業関連会社>
[開発、全体運営(指定管理者)]
弘前芸術創造株式会社 ※2
[設計・監理]
スターツCAM株式会社、Atelier Tsuyoshi Tane Architects株式会社、株式会社NTTファシリティーズ、株式会社大林組、株式会社森村設計
[構造設計・監理]
スターツ免制震構造研究所、株式会社大林組
[施工]
スターツCAM株式会社、株式会社大林組、株式会社南建設、株式会社西村組
[維持管理]
スターツファシリティーサービス株式会社、株式会社NTTファシリティーズ、株式会社NTTファシリティーズ東北
[ミュージアム棟/運営]
エヌ・アンド・エー株式会社
[カフェ・ショップ棟/開発、全体運営(建物所有者)]
弘前賑わい創造株式会社 ※3
[事業マネジメント]
スターツアセットマネジメント株式会社、株式会社スターツ総合研究所
※2 スターツコーポレーション株式会社、スターツCAM株式会社、スターツファシリティーサービス株式会社 、株式会社大林組、株式会社NTTファシリティーズ、エヌ・アンド・エー株式会社、株式会社南建設、株式会社 西村組が設立した特別目的会社
※3 スターツコーポレーション株式会社、エヌ・アンド・エー株式会社が設立し、みちのく銀行が資本参加を行う特別目的会社
==資料1.==================================================
スターツの26年~免震への取り組み~
スターツは1995年に発生した阪神淡路大震災を契機に、免震建物の社会的必要性を探求。今日まで26年に渡り、技術研究と併せて地域住民の皆様へのご理解を賜り、免震建物の普及に努めてきました。2021年2月末までで、受注棟数:532棟、住宅戸数:13,452戸の実績があり、設計から施工まで手掛けた免震建物の棟数は、首都圏で1位※を誇ります。※免震構造協会参考値データ(2018年)
■建設地や収益性にも配慮した技術開発。免制震特許工法は15件に(出願中含む)■
2005年に特許を取得した「高床免震」(特許番号 第3811711号、左)は、建物の1階部分を地盤面から高い位置に配置。1階部分が地盤から高くなることでプライバシー保護に役立つ上、免震装置を配置するための地盤工事にかかる施工費用を抑えることが可能です。
また建物の中間層に免震装置を配置し、基礎部分にかかるコストを大幅に抑え、狭小地など都心部にも対応可能な「吊床免震」(特許番号 第3962758号、右)など、建設条件や施工費を加味した独自工法を開発。2021年1月末までに15件の特許を取得しています。
■免震普及・地震災害への取り組み■
防災用井戸、かまどベンチの設置が累計157棟に
飲料水よりもトイレの水などの生活用水が不足するという阪神・淡路大震災の教訓から、建築物件には家庭用水を供給する防災用井戸の設置や非常時にかまどとしても利用できるベンチの併設をオーナー様にお願いしています。
免震起震車による地震体験は過去5年で約5万人
2007年、日本で初となる免震の揺れが体験できる起震車(地震体験車)を開発。各地の防災イベント等に派遣し、地震の揺れの恐ろしさと、免震の効果を伝える啓蒙活動を行っています。
■官民一体となって取り組んだ、安心して住み続けられる街づくり■
2010年にJR「新浦安」駅徒歩圏内最後の大型開発用地(約51,900平方メートル )にて、分譲住宅(免震マンション170戸・建売戸建88戸)、介護福祉施設(認可保育園・高齢者福祉施設等)、集会場に加え周辺住民にも開放される公園や遊歩道を設けた大型開発プロジェクト<タイムレスタウン新浦安>が始動しました。しかし、2011年の東日本大震災により、敷地の一部が液状化。計画も一時中断しましたが、2011年11月にスターツが幹事となり、浦安市・明海大学なども参加した産・官・学一体の「浦安市環境共生都市コンソーシアム」を結成。分科会等で協議を重ね、官民が一体となって地域ブランド回復に取り組みました。
その後、タイムレスタウン新浦安は2014年に再始動。民間事業最大となる5万平方メートル 超の液状化対策と併せて地盤改良工事を実施し、設計・施工を行った免震分譲マンションは2018年9月に竣工。防災に強い街づくりの一助を担うとともに、地域ブランドの向上を目指しています。
実施した液状化対策は、東日本大震災同等の地震時に対し、敷地内地盤が 「2/1000 傾斜しない」ことを目指して、 2種類の改良工法を用いて設計・施工しています。
<タイムレスタウン新浦安 概要>
所 在 地 :千葉県浦安市明海2丁目2-1
開発面積:約51,900平方メートル
計画概要:
分譲マンション「QUWON新浦安」
分譲戸建て「QUWON GARDEN新浦安」
介護施設「ケアステーションうらら新浦安」
認可保育園「新浦安きらきら保育園」
集会場・遊歩道(外周約1km)など
■建物の維持管理や技術開発に活かすスターツの総合力■
スターツグループは建設会社であるスターツCAM(株)、全国で650店舗※を展開する総合不動産ショップ「ピタットハウス」による不動産仲介、賃貸住宅を約13万室※管理するスターツアメニティー(株)の3社が協力し、建設からその後の維持管理までを一貫して土地オーナー様にご提供しています。 ※2021年2月末時点
免震建物に関しても、各社が連携して維持管理を徹底。特に免震装置は法律により定期点検が義務付けられているため、スターツでは施工を行うスターツCAM(株)内に専門チームを組織化し、技術者による点検を行っています。2019年には半自動で点検を実施できるシステムを開発し、実現場で導入を開始。アフターフォロー体制を整えることでオーナー様にご安心いただけるよう免震装置は20年保証※とし、さらには地震計による地震計測を続け、研究データを蓄積することで将来の技術開発に活かしています。
※免責事項や有料定期点検の実施など、保証契約締結が必要
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