京都伝統産業ミュージアム(運営:株式会社京都産業振興センター 京都市左京区)では、2021年11月6日(土)~2022年1月23日(火)の期間、特別企画展「SHOKUNIN pass/path」を開催いたします。
『職人は手の中に脳がある』イタリアのデザイナー、エンツォ・マーリのこの言葉は、職人が手から手へと言語を介さず繋いできた思想や哲学体系があることを伝えています。
中川木工芸の中川 周士氏と開化堂の八木 隆裕氏が、2017年のミラノサローネで発表した同タイトルの展示を起点に始まった取り組みである本展は、英語の「Craftsman」や「Artisan」とは異なる意味や性格を持つ「職人」という言葉と、職人による「職人性」への探究によってそれぞれの作り手としての現在地を示し、これからの工芸の座標を映し出します。
会期中は、中川木工芸と開化堂に朝日焼、金網つじ、小嶋商店を加え、5つの工房が繋いできた「今」が見えてくる展示と、工芸を軸にしたシンポジウムやワークショップを開催いたします。
特別企画展「SHOKUNIN pass/path」
会期:2021年11月6日(土)~2022年1月23日(日)
(休館日:11/29、12/21、12/29-1/3)
開館時間:9:00-17:00(入館は16:30まで)
会場:京都伝統産業ミュージアム (京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 みやこめっせ B1F)
https://kmtc.jp/観覧料:800円(18歳以下無料)
*社会状況に応じて、開催内容を変更することがありますので、あらかじめご了承くださいませ。
<出展工房>
小嶋商店(小嶋 俊・小嶋 諒)、金網つじ(辻 徹)、中川木工芸(中川 周士)、朝日焼(松林 豊斎)、開化堂(八木 隆裕)
キュレーター:中川 周士、八木 隆裕
アートディレクター:森田 明宏
主催:株式会社 京都産業振興センター
共催:京都市、「KYOTO KOUGEI WEEK」実行委員会
協力:京都精華大学 伝統産業イノベーションセンター
展覧会に込めた思い
SHOKUNIN
pass/path
手渡し続けることが道となる。
工芸の世界は、代々引き継がれてきた技を伝承する。
親から子へ、あるいは師から弟子へ、古くは1000年以上も途切れることなく技を繋いできた。
代々使用される道具や型、そこに宿る精神、変わらぬことの大切さ、変えることの意味、手渡された言葉、
哲学……
時には跳ね、分化しまた繋がる。
職人が手から手へ引き継いできたものの「軌跡」それが工芸である。
「SHOKUNIN pass / path」展には、陶芸、提灯、茶筒、木桶、金網の工房が集まり、それぞれの工房の職人たちが代を重ねて引き継いできたもの、あるいはそれを超えて伝承されてきたものについて考えました。
"道を作ろうとして歩いてきたわけではない、その瞬間を懸命にものを作り出し次に託してきた。
それらを繋いだ軌跡が道となるのだ。"
そして、手渡し続けてきたものの軌跡を、それぞれの工房の視点での表現します。
・創業当時から変わらぬものたちを中心に生まれる心地よいゆらぎ
・素材を探求する中で見つけた様々な形の表現
・代々の個性が重なることで見えてくる工房としての個性
・網の目が重なるようなモノづくりと工房の在り方との連動性
・工房での分業が生み出す緊張感とやさしさ
職人の工房では様々なもの・ことが日常的に繰り返されています。
本展では、それぞれの職人たちが手渡し続けてきたものの軌跡を、それぞれの切り口で表現します。
「変わらぬことの大切さ」と「変えることの意味」。
相反する2つを知り、工芸の違った楽しみ方を見出していただけると幸いです。
出展は京都を代表する5つの工房
小嶋商店|小嶋 俊・小嶋 諒
https://kojima-shouten.jp/小嶋商店は江戸寛政年間創業、京提灯の製造・販売を行なっております。
伝統を守り正統派の京提灯を作りながら、提灯の新たな可能性を求め、既存の概念にとらわれない提灯の在り方を提案していきます。
竹割から紙貼りまで一貫した手作業で頑丈で無骨な小嶋式提灯を生み出します。
江戸時代から代々伝わる伝統製法をベースに、「素材やフォルム、空間」と「提灯」との関係性を模索し、提灯が生み出す新たな景色を創造し、未来に小嶋式提灯を伝承します。
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金網つじ|辻 徹
https://kanaamitsuji.com/京金網は、京料理を支える調理道具として料理をつくる方々に長らく愛用されてきました。
そして、これまでに学んだ知恵や経験を活かした「現代の生活に溶け込む商品づくり」をコンセプトに、手仕事で金網製品の製作・販売を行っております。
私たちがつくる全ての商品は、脇役だと考えています。
金網つじの「脇役の品格」という創作理念のもと、使っていただくことで心地良さを感じていただける金網製品をつくるために、日々ものづくりに精進しています。
そして、これからも時代を超えて、職人が受け継いできた技術を守っていきながら、新しいものづくりに挑戦していきたいと考えています。
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中川木工芸|中川 周士
https://nakagawa.works/中川木工芸は、初代亀一が老舗の木桶工房に丁稚奉公をしたことから始まります。
40年ほど勤めて独立し、1961年に京都白川通りに中川木工芸を開きました。
その後二代目の清司が京都工房を引き継ぎ、2001年に国の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けています。
そして2003年、三代目の周士が滋賀県大津市に「中川木工芸 比良工房」を開きました。
現在、中川木工芸では京都と滋賀、二つの工房体制で運営しています。
木桶の製作技法はおよそ700年前、室町時代頃より大陸からその技法が伝わり、江戸時代頃には日本各地でさかんに使われるようになりました。
中川木工芸ではその当時から受け継がれる伝統的な木桶の製作技法を用いて、おひつや寿司桶など白木の美しい木製品を数多く制作しています。
近年、他の技法では表現が難しいデザイン性に富んだ革新的な作品の製作にも挑戦し、日本国内のみならず海外からも高い評価をいただいています。
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朝日焼|松林 豊斎
https://asahiyaki.com/朝日焼は茶の生産地であり、茶の文化の中心地である京都・宇治の窯元として、宇治という土地の茶文化とともに1600年頃(慶長年間)歩み始めました。江戸時代後期にはそれまでの粉末状の抹茶を飲む茶の湯の習慣とは異なる、「煎茶」という茶葉に直接お湯を注ぎ、急須や宝瓶と呼ばれる道具を使って飲む茶の習慣が現れ、産地としての宇治も煎茶に対応することに伴い、朝日焼でも煎茶のための「宝瓶」という器を作ることとなりました。
このように朝日焼では、大きく茶の湯のための茶盌、そして煎茶のための宝瓶という二つの大きな軸を中心に茶の器を作ってきました。また、他の朝日焼の特長として、その当主の名前を引き継いで作ってきたということも挙げられます。名前を継ぐことにより、その技術だけに留まらず、アイデンティティ、哲学、歴史を確実に継承していくことを意識しています。
現代においては、松林佑典が十六世豊斎を襲名し、茶の湯の茶盌、そして煎茶の宝瓶をともに現代の朝日焼として如何に位置づけるかへと取り組むと共に、日本の茶文化のみに留まらず、英国、台湾や中国など多様な茶文化へ接することで、未来の茶文化を築いていくことを目指し、活動を続けています。また、他ジャンルとのコラボレーションにより、茶文化から他のアイテムへ、他の要素を茶文化へと展開を図ることも積極的に行っています。
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開化堂|八木 隆裕
https://www.kaikado.jp/時は文明開化の1875年(明治八年)、開化堂は英国から輸入されるようになった錻力(ブリキ)を使い、丸鑵製造の草分けとして京都で創業しました。以来、一貫した手づくりで一世紀を過ぎた今もなお、初代からの手法を守り続けてまいりました。
私たちはなぜ一世紀以上茶筒づくりを続けてこられたのか。それは、初代がつくり出した茶筒の価値を知り、守り、つくり続けることが一番大事であると理解しているからです。それを時代や状況が変わっても代々受け継いできました。
開化堂の茶筒は、へこみや歪みができても修理することで使い続けていただくことができます。それは、手づくりだからできることです。大変有り難いことに、二世代、三世代にわたり弊堂の茶筒をお使いのお客様がおられます。それは、もちろんお客様に大事にしていただけたからこそですが、この先、もし修理が必要になっても、弊堂職人によって修理することができるよう、これからも絶えることなく技術を繋いでいきます。
開化堂は、これからも百年使える暮らしの道具を皆さまにお届けします。
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