~変化に対応した防犯対策へ~
旭化成ホームズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:川畑 文俊)くらしノベーション研究所は、自社で提供した戸建住宅の開口部等の修理記録を元にした、過去15年間の侵入被害についての調査結果をまとめましたので報告致します。
調査では、関東圏や中部圏などで侵入経路傾向の差があること、防犯ガラスの普及によってガラス割りによる窓からの侵入の減少が確認された一方で、侵入の手口がガラス割りからサッシのこじ開けへと変化するなど、これまでの防犯提案の効果や、それに対する犯行手法の変化が確認できました。さらに、閉められたシャッターを破壊しての侵入が少ない一方で、シャッターを下ろさない窓からの侵入が多かったり、面格子があっても、窓が開いていることで被害にあったりと、居住者の防犯意識に基づいた行動への啓発が必要なことが分かり、近年の侵入被害に対する建物側での防犯対策設計を含めたヒントも得ることが出来ました。
■調査トピックス
道路からみて侵入場所は建物奥に集中するが、過去15年間で大きく減少。奥への侵入を防ぐ「ゾーンディフェンス」普及の効果も
建物側面手前や建物正面被害の減少幅は微小。特に中部エリアでは正面への被害が特徴的 。中部で敷地正面へ乗り付けて玄関への犯行に及ぶ傾向も
防犯ガラスの普及でガラス割りの被害が減少する一方でこじ開けの比率が増大、人が通れない幅のスリット窓や高窓からの侵入は少なく防犯効果大。
勝手口ドアの格子付き上げ下げ窓の開放や、面格子付浴室窓開放時の被害、更にシャッターを閉めていない窓からの侵入が多いなど、入居者側の防犯意識啓発の重要性を確認
※調査報告書はこちら
https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/kurashi/report/K058.pdfエリアによる住宅侵入盗の被害傾向の差などから、これまで都市部の道路通行者からのみまもりを活かした防犯対策を中心に提案してきた当社にとっても、車両の利用頻度が高いエリアではこれまでと異なる視点での防犯対策を提案するヒントを得ることができました。また、建築時の防犯提案に留まらず、例えば防犯対策として設置したシャッターを効果的に活用するなど、居住後の顧客の防犯意識の啓発が重要であることが分かる貴重な機会となりました。この知見を活かして、より安心してお住まい頂ける住宅の設計を心がけていきたいと考えています。
当社は人生100年時代を生きる人びとの「いのち・くらし・人生」全般を支え続けるLONGLIFEな商品・サービスの提案に努めております。今後も引き続き皆様の大切な財産を守り続けられる住まい・サービスを提案することで、世の中に必要とされる企業を目指してまいります。
■調査の背景と目的
居住環境と住宅侵入被害との関連性を示すデータについては、警察庁等公表のデータ以上のものは、被害住宅を把握することが難しいことから、従来極めて少ない状況でした。それを受け当社は、自社で供給した住宅の修理依頼やメンテナンス履歴のデータベースを活かした調査を実施し、その結果を「戸建住宅の侵入被害開口部に関する実態調査」として2006年に公表しました※1。さらにこの調査結果をふまえ、防犯に関して、見守りとプライバシーの両立、夜間の見守り機能強化、施した防犯対策効果の数値化などを盛り込んだ設計指針を開発し、顧客に提案してきました。そうした取り組みを評価いただき、2018年には、全国防犯CSR推進協議会が主催する、「防犯CSR推進企業」としても表彰されています※2。
近年では住宅対象の侵入窃盗は減少傾向である一方で、ピッキング対策錠やオートロックが急速に普及してきた集合住宅に比べ、戸建住宅の減少幅は小さく、戸建て住宅の比率が高まっています(図1)。また近年の状況を月別にみると、住宅対象の侵入窃盗はコロナ禍でステイホームが始まった2020年3月以降大きく減少しています(図2)。空き巣が約6割を占める現状や住宅以外の侵入窃盗の減り方から、留守の住宅が減ったことが件数減少に大きく寄与していると考えられ、在宅ワーク等の普及次第でポストコロナで増加する可能性が危惧されます。こうした背景から、当社はこのたび、侵入場所や侵入手段の変化を把握し、当社の被害リスクが一般の戸建て住宅より低くなっている理由として、これまで提案してきた防犯対策の有効性を改めて確認するとともに、それに対する更なる有効な対策を探る目的で、新たな調査を実施することとしました。
※1 2006年の調査報告リリース:
https://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2006/ho060419.html※2 2018年の表彰レター:
https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/press/20181102-01/index/出典:警察庁 2007年まで「XX年の犯罪」第15表より抜粋し作成・2008年以降「XX年の刑法犯に関する統計資料」より抜粋し作成
出典:警察庁 各年「犯罪統計資料」2019年~2021年の月ごとの統計より作成
■調査の概要
調査の目的:侵入被害実態の変化の把握と、防犯対策の効果検証
調査時期:2006~2020年(15年間)
調査方法:ヘーベルハウスの修理依頼・履歴から侵入・未遂被害を抽出・集計
調査対象:防犯仕様が導入された2003年1月以降に契約された、自社設計施工の戸建て住宅
調査対象数:833件(うち侵入件数637件、未遂件数196件)
■主な調査結果
1.道路からみて建物奥の被害は多いものの、過去15年間で大きく減少。奥への侵入を防ぐ「ゾーンディフェンス」普及の効果も
被害のうち、敷地の1辺のみが道路に接する中間画地が約6割を占めます。この内1階からの侵入であり、侵入開口部の場所が特定できたものについて、建物の面を正面、側面手前、側面中央、側面奥、背面の5つに区分して集計しました。5年ごとの侵入件数平均データからは、道路から見えにくい建物奥(図中では「背面」と「側面奥」)に集中する傾向がみられるものの、近年その数を大幅に減らしていることが分かりました(図3)。これは、侵入犯が建物奥へ入る経路に当たる建物側面に、道路から見えやすく侵入を防ぐ外構を施すことで一般の通行人からの見守り効果を期待するなどして、建物のカーポート側のライン(ディフェンスライン)から奥に不審者を入れないように計画する「ゾーンディフェンス(図4)」を提案してきた効果と考えられます。一方で建物奥への集中が薄まるにつれて減少幅が少ない側面中央~正面からの侵入の比率が高くなってきています。
2.建物側面手前や建物正面被害の減少幅は微小。特に中部エリアでは正面への被害が特徴的。中部で敷地正面へ乗り付けて玄関への犯行に及ぶ傾向も
今回の調査では、エリアごとに侵入された開口部の分布に特徴があることが分かりました(図5)。2006年当時に当社が提案したゾーンディフェンスは、東京・神奈川の都市部にみられる、密集市街地で通行人が多い状況から発想した通行人の視線などを活用した防犯対策でしたが、道路幅や敷地に比較的余裕がみられる東京神奈川以外のエリアでは側面中央付近からの侵入も見られます。特に顕著だったのは、中部エリアにおいての、玄関などの建物正面や、カーポートに近い建物側面手前側の窓への被害です。基本的に車社会の中部エリアにおいては、犯罪者が車で乗り付け、道路から近い開口部で犯行に及んだあと、車で逃走する、という事例が多発していることが分かりました。対策として、従来からゾーンディフェンスで提唱してきた、敷地奥に侵入されないための「ディフェンスライン」の設置に加え、建物側面からの侵入を防ぐために、側面を道路側から建物奥に向かって照らす「フォワードライティング」の提案、また建物正面への犯行を防ぐために、カーポート手前で侵入を防ぐ「カーポートバリア」の提案がエリアの特性に合わせて必要と考えられます(図6)。
エリア区分
東京神奈川:東京都、神奈川県
関西:大阪府、京都府、兵庫、滋賀、奈良、和歌山の各県
中部:愛知、三重、岐阜の各県
他県:千葉、茨城、栃木、群馬、埼玉、山梨、静岡、岡山、広島、山口、福岡の各県
3.防犯ガラスの普及でガラス割りの被害が減少し、一方でこじ開けの比率が高まる。人が通れない幅のスリット窓や高窓の効果は大。
開口部への手段別侵入被害の分析では、ガラス割りによる侵入リスクが防犯ガラスで0.5/4.6≒1/9、普通ガラスでも1.0/7.1≒1/7と大幅に減少した一方で、ガラスを割らずサッシ自体をこじ開ける手段は減少せず防犯ガラスではガラス割りよりこじ開けの方が多く、侵入手段のシフトが起きていることが考えられます(図7)。また、人が通れない幅のスリット窓からの侵入が無かったほか、地盤面から高さ2mを超える高窓からの侵入被害も極めて少なく、高さ1.7mの12高窓と1.4mの腰高窓では侵入リスクに倍以上の差がありました。こうした防犯ガラスやスリット窓、高窓の活用など、これまで進めてきた防犯対策が有効であったことが確認できました。
4.勝手口ドアの上げ下げ窓の開放や、面格子付浴室窓開放時の被害、更にシャッターを閉めていない窓からの侵入が多いなど、入居者側の防犯意識啓発の重要性を確認
勝手口からの侵入被害状況では、格子付きの上げ下げ窓が開いている(無施錠)状態での被害が多く、これを狙ったと思われる未遂例も多数見受けられました(図8)。また、面格子がついている窓への侵入リスクは面格子がない場合と比較し3分の1程度と評価されましたが、特に浴室において面格子があるが窓自体が開いている状態での侵入が多い状況(図9)でした。こうしたことから、格子付きでも窓は閉めるといった、居住者側の行動の啓発が大切であるとわかりました。
更にシャッター付きの窓について、シャッターを破壊しての侵入被害は15年間で7件だったのに対し、シャッターが空いていた状態での侵入が219件ありました(図10)。夕方から夜の犯行が多いと言われる空巣に対し、昼間留守に見えるからと開けて外出すると、夜になって室内の照明のついていないことから一目で留守とわかる状況が生まれてしまいます。明るいうちの外出でも「夜を想定した戸締り」が必要と考えられます。
シャッターを閉めて外出した場合、タイマーなどを活用して玄関や2階の照明を「居るふり点灯」させることも有効と考えられ(図11)、特に車社会で正面被害の多い中部では車から見て留守に見えないことは重要な対策と考えられます。こうした防犯設備や照明を適切に活用する、入居者への啓発活動が重要であることも分かりました。
以上
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