自立~フレイル期シニア向け賃貸住宅「へーベルVillage」入居者への追跡調査 新サービスによる入居者の健康寿命延伸効果を確認

旭化成ホームズ株式会社

2023年3月20日 17時17分

~常駐スタッフを置かないシニア向け住まいで実現する健康長寿~

旭化成ホームズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:川畑 文俊)シニア事業推進部およびシニアライフ研究所は、運営するシニア向け賃貸住宅「へーベルVillage(ヴィレッジ)」の入居者を対象に2022年4月より導入を開始した新サービス「安心・安全・健康長寿応援メソッド」※1について、その効果をはかる目的で入居者へ追跡調査※2を実施しましたのでお知らせいたします。
※1 新サービス関連ニュースレター https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/press/20220222/index/
※2 調査報告書はこちら https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/kurashi/report/K061.pdf


主な調査結果

新サービス導入初期~半年経過後の比較により、下記のことがわかりました。
1.健康寿命延伸につながる健康行動(活動量・食事・交流)を維持・向上した入居者割合は97%
2.基本チェックリストによるフレイル該当者数が約5%減少し、入居者の健康度が向上


背景

当社は早くから元気な高齢者の住み替えニーズに着目し、2005年より元気な高齢者の安心・安全な暮らしを実現する住まいを目指したシニア向け賃貸住宅「へーベルVillage」の提供を開始しました。その後入居者ご本人に加え、都市部に住む子世帯からの呼び寄せニーズにも合致し、2023年2月末時点で東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県にて136棟1746戸を運営しています。
一方、2019年に実施した入居者アンケート結果などから、主な入居者である後期高齢者では入居者自身の健康認識とその実態に差があることがわかり、コロナ禍を経た今後の人生100年時代において、高齢の元気な入居者に長く健康に暮らしていただくためには、早めの介入を目的とした健康寿命の延伸に資するサービスを盛り込んだ住まいを開発していく必要性があると考えました。そこで、介護・フレイル予防の第一人者である東京都健康長寿医療センター研究所 介護予防研究テーマ・高齢者健康増進事業支援室 研究部長 大渕修一氏と連携し、建物設計や相談員の関与内容、そして交流を生む仕掛けが一体となった「安心・安全・健康長寿応援メソッド」(以下「新サービス」)を開発。2022年4月より導入を開始しております。
この度、引き続き東京都健康長寿医療センター研究所と連携し、新サービス導入開始当初と半年経過後での入居者の実態を追跡調査することで、新サービスの健康寿命延伸にかかわる効果の検証を試みました。調査結果では、新サービスに携わる相談員の声掛け行動などが、自己効力感が低く自信を失いがちな高齢者を励まし、結果として入居者の意欲が高まり、自ら健康行動を増やすことにつながりました。また、介護スタッフなどの常駐スタッフを置かずに、外出しやすい立地にあることや、食堂などを設置せずキッチンや風呂、トイレなどを自室に完備して、自立した生活を促すヘーベルVillageの住まい方が、自立~フレイル期シニアの健康行動量を維持・増加するベースになることも改めて確認ができました。なお、今回の調査結果を受け、大渕修一氏よりへーベルVillage独自の取り組みが、入居者の健康寿命延伸の実現に有効であるとのご評価をいただいております※3。
当社は今回の追跡調査結果を生かし、入居者の行動意欲に合わせた効果的な応援行動を相談員が実施できるしくみを構築することで、これからもヘーベルVillage入居者の生活に寄り添い、健康寿命の延伸と社会保障費の抑制など超高齢社会における課題解決に貢献してまいります。
※3 地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所 発行 「健康長寿新ガイドライン エビデンスブック」より


調査の概要

調査時期:2022年8月~2023年1月
調査方法:アンケート調査及び面談記録による事例検討
調査対象:自立~フレイル期のへーベルVillage入居者 112名


調査結果概要

1.健康寿命延伸につながる健康行動(活動量・食事・交流)を維持・向上した入居者割合は97%
回答を得た入居者のうち、活動量・食事・交流のすべて、もしくはいずれかの項目について、健康行動を維持もしくは増加した入居者の割合は97%と、高い値を示しました。交流は新サービス導入初期から健康行動をおこなえていた入居者が多い項目でしたが、半年後も高い割合で健康行動を維持できていることが分かりました。また、行動していなかった状態から行動に移せた入居者の割合では、食事が25%と最も多い結果となりました。具体的な入居者の行動変化を見ると、活動量では外出頻度が毎日1回以上と答えた割合が15%増加し58%、食事では調理頻度が毎日2回以上と答えた割合が15%増加65%となっており、相談員の応援行動やヘーベルVillageの設計、仕掛けが、暮らしの中の健康行動を後押ししていることが分かりました。




2.基本チェックリストによるフレイル該当者数が約5%減少し、入居者の健康度が向上
入居者の健康状態を確認する基本チェックリストの結果を調査期間内で比較したところ、半年経過後には、約5%の入居者がフレイルの状態からプレフレイル、もしくはロバスト(頑健・健常)の状態へと向上したことが分かりました。新サービス導入による健康行動の維持・増加により、フレイルが減少しており、フレイルを予防し健康寿命が延伸する可能性が示されました。





東京都健康長寿医療センター研究所 介護予防研究テーマ・高齢者健康増進事業支援室 研究部長 大渕修一氏コメント※4

今回の私たちのプロジェクトでは、生活相談員の機能を根本から見直しました。具体的には生活相談員を入居者の元気の後押しをするものと定め、支援ツールを使いながら生活相談員がヘーベルVillageの生活の中で入居者が見せる正の行動変容に敏感になることを業務としました。プロチャツカとデクレメンテは行動変容には、無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5つのステージが有るとしました。この理論の興味深い点は、実際に行動を起こす実行期以前に、無関心期、関心期、準備期と3つもステップが有ることです。このステップを理解することで行動が出現する前の支援が具体的になります。
人は誰しも他者からの期待に応えたいと思うものです。そのいわば大人力のスイッチを押すのです。生活相談員の入居者に対する関心はそれに応えようとする意欲を誘発します。この様に関心期に移行したところで、ヘーベルVillageの特徴である高齢者にとって行動しやすく知的好奇心にあふれる立地の認知を促します。
このプロジェクトでヘーベルVillageは新しい行動を育む場所になったと考えています。
※4 調査報告書 寄稿より抜粋

【ご参考】


常駐スタッフを置かないへーベルVillageにおける健康寿命延伸の取組み「安心・安全・健康長寿応援メソッド」

シニア向け安心賃貸住宅 へーベルVillageは、主に自立~フレイルの高齢者を対象とした自由で自立した生活を応援する「住まい」です。入居者の平均年齢は79歳で、75歳以上の後期高齢者が8割弱を占めています。また、介護保険認定を受けていない方が82%と健常者の割合が高いことも特徴です。
介護スタッフなどが常駐せず食堂を不要とした事業形態で、設計(安全な暮らしと活動・交流を促す住環境) × 相談員(定期的に入居者を見守りイキイキとした暮らしを後押しする人) × しかけ(設備による見守りと交流のきっかけ)の3つで入居者の暮らしを後押しし、入居者自らが健康長寿の3条件(活動量・食事・交流)の行動を増やし、健康長寿を実現することを目指します。




相談員は、ケア視点だけでなく健康長寿視点を加えた面談で、入居者のできることに目を向けた健康行動を維持・増加する応援を実施。相談員と入居者のコミュニケーションツールである「イキイキ!応援シート」を用い、活動量では運動習慣を教えてもらう、食事では得意料理・好きな食べ物・旬の食べ物の話題をする、交流では趣味やお出かけ先・写真を見せてもらうなどの話題で、へーベルVillageの住環境を活用して散歩を誘発したり、入居者同士の交流促進のしかけであるデジタルサイネージへの投稿につなげるなどの行動を即すはたらきかけを継続します。





元気なシニア向け賃貸住宅「へーベルVillage」運営サイトURL
https://www.asahi-kasei.co.jp/hebel-senior/index.html/

旭化成ホームズ(株) シニアライフ研究所について

高齢期の豊かなくらしに着目し、それを支える住まいやサービスのあり方を探るために、シニアライフ研究所は2014年に発足しました。当社におけるシニア分野の研究の歴史として、1980年の二世帯住宅研究所発足時から、親世帯様向けの研究にも取り組んでいます。現在は、住宅分野に限らず、医療・介護・福祉などの外部機関や専門家と連携しながら、幅広く研究を進めています。
くらしノベーション研究所 「シニアの住まい方研究」URL
https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/kurashi/kenkyu/senior/index.html/

地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所について

東京都健康長寿医療センター研究所は、1872年に設立された養育院を前身としています。令和の紙幣を飾る澁澤栄一翁は養育院の初代院長でもあり、福祉・医療事業の維持・発展のため五十有余年にわたり力を尽くされました。その精神は、先人たちにより脈々と受け継がれ、2009年に東京都老人医療センターと東京都老人総合研究所両施設が一体化するかたちで地方独立行政法人となり、今日に至ってもなお、高齢者医療のパイオニア・老年学研究の拠点として、活発な診療・研究活動を展開しています。


東京都健康長寿医療センター研究所 介護予防研究テーマ・高齢者健康増進事業支援室 研究部長 大渕修一氏について

介護・フレイル予防の第一人者で、専門は、理学療法学、老年学、リハビリテーション医学など。厚生労働省の介護予防制度立ち上げ時から携わり、2015年の介護保険法改正により「地域ケア包括システム」のひとつの事業として創設された「介護予防・日常生活支援総合事業」においてサービス利用を決める「基本チェックリスト」の作成にも関わる。第72回保健文化賞受賞。

以上

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