「世界で一番居心地のいい空港」をつくる

三井不動産株式会社

2023年4月21日 18時47分

2023年3月23日、阿蘇くまもと空港 国内線・国際線一体型の新旅客ターミナルビルが竣工 ~世界と地域にひらかれた九州セントラルゲートウェイ~

三井不動産グループでは、ロゴマークの「&」に象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、グループビジョンに「&EARTH」を掲げています。街づくりを通して、人と地球がともに豊かになる社会に向けた取り組みをお届けしてまいります。

今回のテーマは、三井不動産が国内各地で取り組む空港運営事業。三井不動産は、地元企業・在京企業・国・自治体等、様々なステークホルダーと協力しながら、魅力的な空港づくりに取り組み、地域社会への貢献を目指しています。
プロジェクトに携わる人々へのインタビューも交えながら、世界と地域にひらかれ、未来につながる「世界で一番居心地のいい空港」づくりの取り組みをご紹介します。




三井不動産が手掛ける空港運営事業


三井不動産では2020年より、民間委託(コンセッション)方式を活用した空港運営事業に参画しています。地域と共に成長し、地域社会の活性化に貢献する空港を目指して、地域の様々なステークホルダーと手を取り合いながら運営を進めてまいりました。以下に、三井不動産が運営に携わる日本各地の空港を紹介します。



なぜ三井不動産が空港を? 強みを生かした空港運営とは
 不動産会社が空港の運営に携わることを、不思議に思われるかもしれません。しかし実は、空港は大規模な複合施設の一種であると言えます。旅行を楽しむ場所でもあり、お買い物を楽しむ場所でもあり、働く人のための施設でもあり、物流の拠点でもあります。すなわち、その運営には、三井不動産が長年手掛けてきた「ミクストユースの街づくり」に近いものがあります。

 三井不動産では、空港の運営においても「街づくり」と同様、地域全体への貢献に事業の大きな意義があると考えています。空港を単なる交通施設と捉えるのではなく、地域の魅力を世界に伝え、暮らしをより快適にする場と捉えることで、地域社会のサステナビリティ向上につなげます。今後も地域の皆様と密に連携しながら、より良い未来を築く空港運営を続けてまいります。




阿蘇くまもと空港


 2016年の熊本地震による被害を乗り越え、2023年3月23日、国内線・国際線一体型の新旅客ターミナルビルが竣工。「世界と地域にひらかれた九州セントラルゲートウェイ」として生まれ変わりました。
 空港を単なる交通施設を超えた「世界と地域をつなぐ交流拠点」と捉え、世界との往来の玄関口であるとともに、地域の人々にも開かれた空港を目指し、2024年にオープンする2期開業エリアでは、地域の魅力を体感できる様々なイベントを開催できる広場も整備していく予定です。
 また、「世界で一番居心地のいい空港」を目指し、世界と往来する航空旅客にとっても過ごしやすい環境を実現。保安検査後に滞在できるエリアを大幅拡張し、搭乗直前まで時間を気にせず楽しめる「滞在型ゲートラウンジ」を導入しました。旅の最後のひとときまで、ゆったりと熊本滞在を楽しめる空港となっています。また、短時間かつストレスフリーに搭乗手続きができるよう、セルフチェックイン機器やスマートレーン等、最新鋭のファストトラベル機器も導入しました。


広島空港


 中国・四国の中心に位置する広島空港。国際線の誘致や二次交通網の充実、広域観光促進などに取り組み、多角的にアップデートを進めています。
 中四国、瀬戸内・山陰エリアの魅力を国内外に発信し、人やモノの流れを呼び込むことにより、単なる移動の拠点を超えた、世界中から中四国、瀬戸内・山陰エリアへいらっしゃる人々の「感動の拠点」へと進化させます。地域の発展に尽くし、地域とともに成長していくことをミッションとして、広島はもちろん、中国・四国地方全体の持続的成長に貢献する「圧倒的No.1ゲートウェイ」への進化を目指します。


北海道7空港


 北海道エリアでは、道内にある全13空港のうち、新千歳・稚内・釧路・函館・旭川・帯広・女満別の7空港をコンセッションしています。
 北海道では、旅客規模や収益が札幌周辺に偏ってしまうことが課題となっています。そこで、広い道内に散らばる空港をまとめて運営することにより、各空港の役割を明確化し、エリアの個性を活かした運営をねらいます。二次交通網の拡充にも取り組みながらエリアごとの多彩な魅力を伝え、豊富な観光資源を活かして北海道全体の地域経済活性化を目指します。


「地域にひらかれた空港」を目指して~阿蘇くまもと空港の取り組み~


2023年3月に新ターミナルビルがオープンした阿蘇くまもと空港。世界にも地域にもひらかれた空港を目指して、リニューアルプロジェクトが推進されてきました。ここでは、地域の魅力を世界の人々に伝え、地域全体の活性化に貢献するための阿蘇くまもと空港の取り組みをご紹介します。



熊本地震からの創造的復興のシンボルとして
 2016年に発生した熊本地震は、地域に甚大な被害を与えました。震度7の揺れが同じ地域を立て続けに2回襲う前代未聞の災害で、とりわけ天下の堅城である熊本城の損傷は、多くの人に衝撃を与えました。


 この大地震からの復興にあたって、重視されてきた考え方の一つが「創造的復興」です。創造的復興とは、地域を単に地震の前の姿に戻すだけでなく、より良い状態にする復興を指します。

 地域にとっての「空の玄関口」である阿蘇くまもと空港の再整備は、熊本県が創造的復興に向けて掲げた大きなミッションの一つでした。「創造的復興のシンボル」としての新ターミナルビルの建て替えと、交流人口(空港利用者)の拡大を進めるために、国は民間委託(コンセッション)方式を採用。三井不動産を代表とする民間11社のコンソーシアムが空港の経営計画を提案のうえ、プロジェクトに参画することとなりました。


世界と地域をつなぐ空港へ
 ターミナルビルの建て替えにあたって、構造・設備の強靭化による安全安心の提供が求められたのはもちろんですが、それに並ぶ大きな目標として、空港を通じた交流人口の拡大と地域活性化の実現がありました。


 そこで阿蘇くまもと空港の新ターミナルビルでは、世界の玄関口にふさわしい最新鋭のターミナルビルをつくることと、飛行機で熊本を訪れる人々だけでなく、地域に住む人々にもひらかれた空港計画をデザイン。日常にも非日常にも居心地の良い環境を整備し、各種イベントの開催が可能な「にぎわい広場」を設けるなど、世界の人々と地域の人々がどちらも楽しめる空間を実現します。(※にぎわい広場は、2024年にオープン予定)



魅力ある地域のアイデンティティを表現



 阿蘇くまもと空港の外観・内装は熊本城をデザインモチーフとして設計され、熊本城の黒漆や漆喰、石垣、そして阿蘇の火山岩など、地域を象徴する素材をイメージさせるデザインになっているほか、熊本や九州の木材もふんだんに使用されています。こういった素材をモダンなデザインで表現することにより、魅力あふれる地域のアイデンティティがいっそう広く伝わるよう工夫しています。



PROJECT STORY


多様なメンバーが知恵を持ち寄り 地域に愛される「唯一無二の空港」をつくる


※熊本国際空港株式会社は三井不動産を筆頭株主とする株式会社

 今回は、三井不動産での様々な業務経験を携えて阿蘇くまもと空港のコンセッションプロジェクトに携わり、地域と密に連携しながら新しい空港づくりを推進してきた三名の方々にインタビューを実施。これまでのキャリアをどう活かし、どういったハードルを乗り越えてプロジェクトを前に進めてきたのか、当社を筆頭株主とする株式会社である熊本国際空港(株)代表取締役社長の新原昇平、熊本国際空港(株)経営企画本部 経営企画・財務部兼 新ビル整備室課長の小川哲弘、三井不動産(株)ソリューションパートナー本部事業開発部の高木啓吾(当時)※に聞きました。
※2023年4月 ソリューションパートナー本部産学連携推進部に異動


ー皆様が今回のプロジェクトで担当された仕事や、チーム内での役割を教えて下さい。


熊本国際空港(株)代表取締役社長 新原昇平(以下、新原):私は熊本国際空港の代表という立場から、事業全般を取りまとめる役割を担いました。外部とのやりとり、チーム内のコミュニケーションなど、プロジェクト全体に目を配りながら、事業を前に進めていきました。

熊本国際空港(株)経営企画本部経営企画・財務部兼新ビル整備室課長小川哲弘(以下、小川):私は「経営企画財務部」と「新ビル整備室」という2つの部門を兼務する形でプロジェクトに関わりました。仕事内容としては、資金調達をはじめとする経営関連の実務と、新しいターミナルのハード面の整備、そしてテナントの誘致に携わりました。

三井不動産(株)ソリューションパートナー本部・事業開発部事業開発・事業グループ高木啓吾(以下、高木):私は現在の部署で5年間にわたって熊本空港プロジェクトに関わってきましたが、そのうち前半と後半で関わり方が異なりました。配属当時は今回の民間経営プロジェクトが動き出した時期でしたので、地元・在京企業11社と共に、新ターミナルのコンセプトや、空港の経営計画やビジョンを策定し、国に提案するという部分から取り組みました。そして、熊本国際空港株式会社の立ち上げ直後の時期には、新ターミナルビルの基本設計やゼネコン発注までを担当しました。いっぽう後半は東京にいながら、三井不動産全体のリソースを活かし、現地の皆様をサポートする業務に携わりました。


─これまで皆様は、空港以外の多様な事業領域でキャリアを積んでこられたそうですね。過去に他事業で得た知見は、今回のプロジェクトに活かされましたか?

新原:今回のプロジェクトでは、街に暮らす方々や行政の方々といかに連携できるかが重要なポイントでした。というのも、熊本の方々が今回の空港リニューアルに抱いておられる期待は想像以上に大きく、これは失敗できないぞ、必ず地域の皆様に愛される空港をつくらなければという緊張感が常にあったんです。そういった想いの中、地域の皆様と良い関係を築いていく上で、過去の経験が役立ったと思います。私は日本橋で8年、名古屋の支店長として3年間、地域の方々から多くのことを学ばせていただきました。その頃の経験があったからこそ、今回の熊本でも、皆様との信頼関係づくりができたと思っています。このように地域とつながり、地域にひらかれた空港をつくることが今回のプロジェクトの大事なポイントであり、三井不動産が関わる意味も、そういった部分にあると考えています。

小川:空港事業には幅広い業務が含まれるので、これまでの三井不動産での様々なキャリアが役立ちましたね。例えば経営企画の業務には、以前に財務部門にいたときの経験がそのまま活きましたし、ビルの開発にあたっては、ららぽーとなどの商業施設を開発・運営した際のノウハウを応用できたと思います。特に今回は、単に空港をつくるだけでなく、店舗や交流空間が充実した新しい空港施設をつくるという取り組みだったので、過去の商業施設の経験は大いに役立ちましたね。また自分自身の経験だけでなく、これまで仕事を通じて築いてきた人とのつながりも活かすことができました。過去に商業施設で一緒に仕事をした方々と再びコンタクトを取って、サイン計画や賑わい創出の計画を進めていったんです。




高木:官民連携かつ共同事業という性質上、プロジェクトに関わる様々な企業の皆様の多様な価値観をまとめる部分で、これまでの経験が必要不可欠だったと感じています。かつて私は商業施設本部でテレビ局や他のデベロッパーとの共同事業に取り組みましたが、企業や業種によって、仕事への取り組み方や、企業としての価値観が大きく異なるということを学びました。また、オフィスビルの現場管理をおこなう部署では、現場でこだわりをもって管理にあたる方々、外国政府系グローバル投資家など様々な役割の異なる人たちと関わる中で、それぞれの立場の人が、それぞれの理想やこだわりを抱いて仕事に取り組んでいる姿を目の当たりにしました。地元や在京、国や自治体等、たくさんの企業や公共セクターが関わる空港事業は、これらの経験の拡大版のようなものです。それぞれの会社や立場から生まれる多彩な価値観や専門性を、ひとつのビジョンのもとにまとめていく力が必要でした。投資、オペレーション、地域との共生など様々な部分について、皆でとことん話し合って答えを探していきました。そのとき感じたのは、お互いに「外の人」だからこそわかる強みや魅力があるということです。それぞれの良い部分を活かし、全員が納得できる答えを見つけていく―対立する概念を「OR」でどちらか選ぶのではなく、相克を乗り越え「&」で共生させる―まさに当社の「&」マークの理念そのものと言っていい、共創的な取り組みができたと思います。




─多様な人材が関わるプロジェクトだからこそ、 やりがいも大きそうですね。

高木:実は、当初は各自が考える「理想の空港像」がぶつかることもありました。「新しく空港をつくる」という一生に一度の機会ですから、ひとりひとり、大切にしたい思いやこだわりがあるのは当然と思います。しかしビジョン策定の中盤あたりで、先ほど新原さんもおっしゃった「世界にも、地域にもひらかれた空港」というキーワードが出てきて、それがターニングポイントになりました。そのときから、地元企業の皆様も、在京企業の皆様も、同じ一つのゴールを目指せるようになったと感じます。単に利益を追求するだけでなく、地域に寄り添い、地域の活性化に貢献し、皆に愛される空港をつくろうという想いが一気に共有された瞬間でしたね。

新原:それぞれに想いがある中で、ひとつの方向性を目指していくことは常に重要なこととして捉えていました。そしてこれは、今後も継続して取り組んでいくべき課題です。ターミナルの建設・竣工までは目標が見えやすいですが、オープン後の運営にあたってどのように共通のゴールを設定していくかが大切だと考えています。今までは上の存在だった新ターミナルが現実のものとなり、周囲やお客様の評価が聞こえてくると、関係者一人ひとりがプロジェクトの大きさを実感できることと思います。これを成功体験として共有し、ポジティブな一体感へとつなげていきたいですね。


─コロナ禍でプロジェクトを進めることになりましたが、苦労はありましたか?

小川:感染拡大下で、これまでの熊本空港の何倍もの数のテナントを誘致すること、これが最も大きな課題でした。私にはこれまで営業の経験がなく、最初は誘致そのものに苦労しました。さらに今回のチームでは自分が開発と誘致どちらもやらないといけません。未曾有の社会状況のもと、様々なバックボーンの人たちと協力しながら取り組む誘致業務は簡単ではありませんでした。また、多くのテナントさんにとって、空港への出店は全く新しいチャレンジです。ただでさえ大変なコロナ禍に、どうすれば一歩踏み出してもらえるかを考える必要がありました。試行錯誤の中、功を奏したのは、「熊本の魅力を伝える」という空港の機能をアピールすることです。保安検査後の搭乗待合スペースが広く、県外や国外の人と熊本との接点として機能することを説明し、一つひとつのテナントさんの出店により、熊本の魅力を多くの人に知ってもらえるチャンスが増えるとアピールすることで、共感してくださるテナントさんが増えていきました。熊本のために良い空港を作る」という志が、支えになってくれたと感じています。

高木:計画当初はコロナのような状況は全く予想していなかったので、やはり大変でしたね。一時期は、世間的に、「旅行に行く」ということ自体が、ポジティブに捉えられない時期もあったと思います。それでも、地元の旅行関係者や、航空・空港関係者の皆様と一緒に、安全安心の確保を大前提として、「やっぱり旅行っていいよね」と思っていただけるような施策に取り組んだりしました。逆に、当初はまったく予想していなかったポジティブなニュースとしては、熊本では台湾の世界的半導体メーカーのTSMCが空港のすぐ近くに半導体工場を建設することが決まりました。そのため、観光客以外のビジネス需要にはどのようなニーズがあるのか、常にアンテナを張りながら柔軟に舵取りをする姿勢が求められました。しかしその苦労を通じて、固定観念に囚われず、変化し続けることの大切さを学ぶことができたと思います。






―新しいターミナルビルの建物について、特にこだわりのポイントはありますか?

小川:3階の搭乗待合エリアの地元・小国杉の板材を使った天井です。木造トラスの梁と鉄骨の柱を組み合わせたハイブリッド構造となっており、注目していただきたいポイントです。また、東京オリンピックのベンチとして使われた熊本産の木材が、また地元に戻ってきて化粧材として活用されています。それから「肥後漆喰」といって、熊本城の漆喰壁にも使われている伝統的な塗り壁材も使われています。この肥後漆喰は、貝殻を主原料として作られるものです。石灰岩を使う一般的な漆喰と違い、本来であれば捨てられてしまうものを資源として有効活用していて、環境保全にもつながる塗り壁材といえます。その他、三井不動産の「経年優化」の概念のもとで随所に工夫が施された建物なので、ぜひ現地で見てみてください。




―地域の方々の反応はいかがでしょうか。

新原:まだ新ターミナルビルオープン前の時期から、どこに行っても皆様からの期待の声をいただいていました。この前、個人的にクリーニング店に伺ったときにも、店員の方が「オープン、もうすぐですね」と笑顔で声をかけてくださいました。地域の方々が新しい空港を楽しみにしてくださっているのを肌で感じて、嬉しくなりますね。

―新しくなった空港施設のこれからの運営について、展望や意気込みをどうぞ。

高木:ずっと図面でしか見ていなかったものが実際に出来上がっているのを見て、うるっと来てしまいました。現物はパースよりもかっこよく、魅力的な建物に仕上がっていますよ。例えば、エスカレーターで1階から3階に上がっていくと、左手の大きなガラス越しにお店や人々の賑わいが見えてくるんです。エスカレーターを上がりながら、熊本の魅力や活気を目の当たりにして、わくわくする気持ちが高まっていく構造になっています。このように、空港利用の動線に沿って楽しめるように工夫したポイントがほかにもたくさんあるので、随所でそういった仕掛けを楽しみながら利用していただけたらと思います。ぜひ多くの方に足を運んでいただきたいです。




小川:今回の新ターミナルビルのオープンは「第一弾」です。これから広場などの交流の場を整備して、ますます地域に愛される空港を目指していきます。ららぽーとをはじめとする商業施設で培ったノウハウも活かして、近隣住民やビジターも楽しめるイベントを開催したいですね。

新原:これほど地域にひらかれたことを目指した空港は、日本中を探してもほかにないと誇りを持っています。今後もそこにこだわり続けて、三井不動産の街づくりノウハウを活かしながら、いつまでも唯一無二の価値を持つ空港として運営していきたいですね。


※以降、詳細につきましては三井不動産のホームページをご覧ください。

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