マイナス金利解除が現実味を帯びる中、約7割が今後の金利を「上昇」と予測
事業を通して社会課題解決に取り組む、株式会社LIFULL(ライフル)(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:伊東祐司、東証プライム:2120、以下「LIFULL」)が運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」は、5年以内に住宅を購入予定の方を対象に『住宅ローンに関する意識調査』を実施しました。
LIFULL HOME'S PRESS:
https://www.homes.co.jp/cont/press/report/report_00340/マイナス金利の解除が現実味を帯びる中、住宅ローン金利の動向をどのように予測しているのか?
バブル崩壊以降、今日までは「変動金利」を選んだ人の方が、結果的に低金利の恩恵を受けてきました。その一方で、まもなくマイナス金利が解除され、超低金利時代が終焉を迎えるのではないかとささやかれています。これから住宅ローンを組もうとしている人や既に組んでいる人の中には変動と固定のどちらを選ぶべきか、借り換えをするべきなのか、悩んでいる人も多いのではないかと思います。
そこで、ユーザーの最新の意識を調査し、LIFULL HOME'S総研チーフアナリストの中山による考察と共に発表します。
今後1年間の見通しについて
不動産価格:過半数が「上昇すると思う」と回答
ウクライナ侵攻や円安などを背景に近年上昇を続けてきた住宅価格ですが、今後1年間についても過半数が引き続き「上昇すると思う」と回答しました。「下落すると思う」と回答したのは1割にも満たず、厳しい見方をしている人が多いことが浮き彫りとなりました。
住宅ローン金利:約7割が「上昇」を予測
今後1年間の住宅ローンの見通しについて、最も多かった回答は「ゆるやかに上昇する」(52.4%)で、「何かをきっかけに大きく上昇する」(16.9%)と合わせると69.3%が「上昇」を予測していることが見えました。
引き続き、住宅ローン金利の動向には注視が必要だと考えている人が多そうです。
住宅購入に対する意識
45%が「住宅ローン金利が上がる前に買いたい」と回答
住宅購入に関しての考えについて聞いたところ、1位が「住宅ローン金利が上がる前に買いたい」(44.7%)、続いて「住宅ローン控除(減税率)が変わらないうちに買いたい」(42.1%)と、住宅ローンに関する選択肢が上位を占めました。また、3位には「希望に合う物件が出たら買いたい(現状希望に合う物件が出ていない)」(36.0%)が入っており、住宅価格の高騰によって希望条件と価格に折り合いがつきづらくなっている状況がうかがえました。
世帯年収「1,500万円以上」だと「住宅ローン金利が上がる前に買いたい」の回答が7割超に
「住宅ローン金利が上がる前に購入したい」と回答した割合を世帯年収ごとに見たところ、400万円未満だと37.3%、400万円以上1,500万円未満は40%台だったのに対し、1,500万円以上だと73.8%にまで増加しました。世帯年収の高い家庭ほど高額な住宅を買う可能性は高く、それが故に住宅ローン金利の少しの変動でさえも大きな影響が出ると感じているのかもしれません。
93.7%が住宅ローンの支払いに「不安あり」
住宅ローンの支払いについては65.0%が「大いに不安がある」、28.7%が「やや不安がある」と回答し、大多数が多かれ少なかれ不安を抱いていることが分かりました。
円安に起因する物価上昇など、日常生活を送る上での不安が大きいことも住宅ローンの支払いに対する不安を煽っていそうです。
住宅ローンの利用について
検討したい金融機関:大都市圏では「メガバンク」、地方では「メガバンク」「ネット銀行」「地方銀行」が拮抗
住宅ローンを組むのに検討したい金融機関を居住地別で見たところ、関東・近畿では「メガバンク」(65.4%)が最も多く、続いて「ネット銀行」(56.4%)、「地方銀行」は半数を下回りました。一方で関東・近畿以外では「ネット銀行」(50.2%)、「メガバンク」(48.6%)、「地方銀行」(48.0%)が2%ほどの差で拮抗しました。
今住宅ローンを組むなら:「固定金利」67.0%、「変動金利」が22.5%
「変動金利」を選択した割合が22.5%だったのに対し、「固定金利」は約3倍の67.0%となりました。住宅金融支援機構の2023年4月調査結果(調査期間:22/10-23/3、※1)では、72.3%が「変動金利を利用」と回答しています。これまでは異次元緩和により、金利が低い水準であった変動金利が人気でしたが、ここにきて「固定金利」を検討している人が増加してきているようです。
※1:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2023年4月調査)」
https://www.jhf.go.jp/files/400366409.pdf何%まで変動金利を組むか?:最多は変動金利が「1.5%まで」、固定金利が「2.5%まで」
「変動金利」の場合、最も多かった回答が「1.5%まで」(29.1%)、その次に「1%まで」(25.7%)が続き、この2つで過半数を占めました。「固定金利」では最も多かった回答が「2.5%まで」(39.7%)、僅差で「3%まで」(36.3%)が続きました。現状の金利は変動が0.3~0.5%、固定が1.4%~2.0%前半程度なので、大きな上昇は許容できないと考えている人が多く、金利の変動が住宅購入に大きな影響を与えていることがうかがえる結果となりました。
<考察>LIFULL HOME'S総研 副所長/チーフアナリスト 中山登志朗(なかやまとしあき)
住宅ローン金利は住宅取得ニーズの1丁目1番地
直近の住宅市場では、ロシアのウクライナ侵攻継続による資材価格の高騰、日米の政策金利差の拡大による円安の進行、コロナ後の住宅需要本格回復などによって、特に都市圏中心部での新築住宅価格の高騰に歯止めが掛からず、東京都心部の新築マンションが平均で1億円を突破するという90年バブルを遥かに超える価格過熱感が発生しています。
この価格上昇を支え続けてきたのが住宅ローン金利です。今から約10年前、日銀の黒田前総裁が当時の安倍政権と協力して始めたのがアベノミクスの第1の矢である“大胆な金融政策”で、これはデフレからの脱却と富の拡大を目的として、ゼロ金利政策に誘導することによって借入金利を限りなく低くし、強く&幅広く投資を促すというものだったのですが、企業向け融資は依然低調で資金需要も伸び悩んだのに対して、住宅投資(購入)についてはこの低金利を追い風として住宅購入が拡大し、ゼロ金利政策の開始当初から住宅ローン金利が下がり続けたことによって、住宅需要を喚起してきました。この間、国も同調して住宅ローン減税の制度を拡充し、住宅購入することで長期間(10年から13年)の控除が受けられる上に、低金利で返済も比較的容易という状況が当たり前になり、住宅の販売価格も年々上昇して“制度的不動産バブル”の状況を創出したと言えるでしょう。
この状況が2023年5月以降、植田日銀新総裁に変わって変化し、長期金利の1%容認によって連動する住宅ローン固定金利の上昇傾向が顕著になり、さらにマイナス金利に誘導されている短期金利にもテコ入れするとの観測によって同じく連動する変動金利も今後上昇するのではないかとの憶測が広がっています。
今回のアンケート結果を見ても、住宅価格も住宅ローン金利も上昇するとの予想が最も多くそれぞれ過半を占めていますが、住宅ローン金利が固定も変動も明確に上昇することになれば、世帯年収の明確な拡大が発生していない現状では、エリアによって多少違いはあるものの売れ行きは減速し、それに応じて住宅価格も頭打ちから下落する方向に変化するものと考えられます(ただし、住宅性能の適合義務化が始まる2025年4月以降はコストプッシュによる価格上昇の可能性があります)。
これまで景気を下支えし続けてきた住宅市場および関連産業が停滞・縮小することになれば、日本の経済状況は確実に悪化することになりますから、日銀の専権事項とはいえ、これまで長年維持されてきた住宅市場・購入ニーズをシュリンクさせないよう、特に住宅ローン金利に配慮して極めて慎重に金利政策に取り組む必要があります。
調査概要
期間:2023年12月14日 ~ 2023年12月18日
調査対象者:5年以内に家を購入する予定があり、住宅ローンを利用予定の人
調査方法:インターネット調査
有効回答数:有効回答数:スクリーニング:5851人、本調査:658人
※小数点第二位を四捨五入しているため、合計が 100%にならない場合があります。
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https://www.homes.co.jp/)
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