2009年の創業以来、福岡で不動産売買、管理、民泊、建築企画などを手がける総合不動産業アルマデグループ(福岡市博多区御供所町、以下アルマデグループ)。創業者である本田幸一郎社長は、十数名規模の不動産会社では珍しいチーム制の導入や新卒採用を毎年実施しており、中途採用だけに頼らない独自の組織運営で事業を拡大。直近15期は過去最高売上高4.8億円を達成するなど、同業からも注目を集めている。
こうした成功の背景には、過去に社員が大量退職し、一時は経営危機に陥った経験があったという。今回はそんな過去のエピソードから、現在の飛躍に至るまでのストーリーを社長本人に聞いた。(聞き手:ライター)
社員同士がライバル!個人主義(成果主義)の営業推奨で売上を伸ばし順調だったが…。
ーまずは事業概要について教えてください。
当社は2009年に福岡市中央区荒戸のワンルームで創業しました。中小規模の投資家向け不動産仲介や管理業務案件を中心に裾野を広げ、不動産に付加価値を与える事業を行う株式会社アンドエスを設立。2022年には佐賀県鳥栖市の不動産仲介・管理会社を事業譲受し、現在グループ3社体制で事業を展開しています。
ー人員構成は。
グループ全体で14名在籍しています。新卒と中途の両軸で採用活動を行っており、特に新卒採用は毎年実施しています。2022年卒から毎年複数名採っていますが、新卒採用の離職はゼロです。
ー入社3年以内の離職者は約3割と言われる中で、離職ゼロとは驚きです。経験がものをいう不動産業界では中途採用が主流な中、なぜ毎年新卒採用を行っているのですか?
確かに数名~10名前後の規模だと、特に経験値を持つ中途が重宝されます。そもそも新卒社員を育てるリソースもないでしょうし、どうしても個人主義になりがちですからね。当社も数年前は中途採用のみで完全個人主義・成果主義でやっていました。ただある時、大きくつまずいた瞬間があったんです。その時、今のままでは組織として成長できないと危機を抱き、組織運営を大きく変えることにしたんです。
幹部全員退社の大打撃....“自分の考え方を全否定することから始めた”
ー具体的にどのような失敗があったのですか?
2015年に幹部3名が一気に辞めてしまったんです。突然退職すると申し出てきて、自分が担当するお客様は持っていくと言われてしまいました。今考えれば、辞められて当然の会社でしたし、その時の彼らの気持ちが十分にわかります。あと結果的に組織改革にもつながったので、その点はとても感謝しています。
ー幹部が退職した原因は何だったと思いますか?
当時は一切横連携をとらない属人型の仕事を推奨していたので、個人事業主のような感覚で働いていたのでしょうね。人間関係も希薄化していましたし、帰属意識というのはなかったのだと思います。極端な話、お金でつながっていて、本質的なところではつながっていなかったのだと思います。そんな環境を作ったのは他の誰でもなく私自身なので、当時は深く反省しました。組織としてビジョンなど目標もなく、ただ会社という「ハコ」があっただけでした。
ーただ会社という「ハコ」があっただけ…。そこから社長はどのような行動をされたのですか?
まずは今までの自分のやり方を全否定することから始めました。かなりしんどかったですが…。そこから徐々に「人を大切にする組織にしたい」という想いが芽生えてきました。いくら採用を募集して入社してくれたとしても、今の私や組織がこのままだとまた同じことを繰り返してしまう。会社の軸がないと、組織として成長はできないと感じたんです。
全社員が同じ方向を向いて働く組織を目の当たりにし、経営理念や規則の明文化に即座に着手
ー人を大切にする組織づくり…。具体的にどんなことから始めたのですか?
とにかく本やネットを使ってどうすれば人を大切にする組織にできるかを必死に調べました。結論、まずは会社の目指すべき方向性をしっかりと定める必要があると思いました。いわゆる経営理念の策定です。正直最初は半信半疑でした。元々私も独立前は個人主義で「売り上げノルマ達成するぞ!」というタイプだったので、策定したところで将来的に売り上げにつながるのか?と常に不安でした。そんなさなか、県外のとある同業社を見学させてもらう機会があったのですが、その会社は理念策定だけでなく、社内浸透もしっかりとされていて、全社員が同じ方向を向いて仕事に取り組んでいました。その光景を見て、一気に疑念が解消されましたね。これはやるしかないと!
ー経営理念というのは今まで全くなかったのですか?
創業当初にちょっと考えたものはあったのですが、特に思い入れがあったわけでもなく、ただ額縁に飾られていただけの存在でした。なので、改めて真剣に自分のこれまでの人生を振り返り、本当にやりたいこと、社員に共感してほしいこと、社員の将来、会社の将来などを考えて理念策定のためのキーワードを引き出し、それを社員の前で説明し、文章化しました。ただ、作ったはいいものの、なかなか共感や浸透には行きつきませんでした。
ーたしかに理念を浸透させるのは非常に難しいと聞きます。
そうなんです。どうすれば共感・浸透をしてもらえるか考えた結果、会社全体のビジョンを作り、経営計画書を策定することに決めました。最初は私が作っていましたが、社員を巻き込んでいった方が何事もスピードが早いということが分かってきたこともあり、全員で制作しました。
ただ、理念を軸にした経営や仕組みづくりの過程で、今まで曖昧だった業務ルール等を明文化されるのが嫌で辞めていったスタッフもいました。でもそれは仕方のないことだと割り切り、ひたすら残った社員を巻き込んでいきましたね。そうしてやっとの思いで会社の方向性を明文化した経営計画書が出来上がり、走っていた矢先に、コロナが直撃したんです。
コロナ禍で赤字転落。民泊事業撤退という苦渋の決断
「人を大切にする組織にすると決めた以上、何としても社員を守りたかった」
ーコロナが拡大する前の福岡はインバウンド需要がかなり盛り上がっていましたよね。民泊運営や代行に注力されていた貴社もかなりの打撃を受けたのでは…。
まさに大打撃でした。コロナを機に民泊部門の社員を不動産事業に転換させ、当時組織改革を図っていた兼ね合いもあり、外注業務の内製化やDX化に力を入れました。しかし、こうした新しい動きを嫌がるスタッフもやはりいるわけで…。ここでもまた数名が退職しました。残ったメンバーは総勢6名くらいでしょうか。当時は赤字の原因だった民泊事業の撤退を決断し、今いる社員を守ることにとにかく必死でした。人を大切にする組織にすると決めていましたから。
ー事業も社内も危機的状況の中、この頃から新卒採用を開始されていますね。
民泊事業は一時撤退していましたが、いずれコロナは落ち着きインバウンド需要や経済の回復もあると予想していたので、経済が本格的に動き出す前に戦える準備をしていこうと思い、新卒採用を始めました。
ー一般的には即戦力になりえない新卒を採用することに対して、社内から反対の意見はでなかったのですか?
もちろんありました。しかしながら当時はすでに会社の方針が明文化されていたので、最終的に理解を得ました。当時はもちろん採用専任スタッフはいませんし、私1人だけではリソースの限界があるので、スタッフ総出でリクルート活動を行いました。
新卒でも即戦力化できる組織運営を確立
ーその後コンスタントに新卒採用をされていますが、会社としてどのようなメリットがあるのでしょうか?
まず、既存スタッフの意識が変わります。未経験のスタッフに教えるためにマニュアル作成やレクチャーをしたり、アウトプットする環境を会社として整えたことで、新卒だけでなくスタッフ全体の成長にも繋がりました。また、この頃からチーム制を採用しており、チームで新卒を育てていく風土も徐々に醸成されていきました。
ー民泊はともかく、その他の事業で新卒が活躍できる場は少ないと思うのですが…。
これもチーム制が役に立っていますよ。不動産の仕事って全ての業務が経験値を持つ人材じゃないとできない訳ではないんです。業務を細分化し、新卒でもできる業務は新卒が担当、それ以外は中途が行うといったチーム内での分業制を採っています。また、経験値や勘が頼りだった物件検索も、RPAを活用することで属人的な仕事にならないように工夫しています。
ーチーム制とDX化でスキルを問わず活躍できるフィールドが整っているのですね。採用や定着に悩む同業の方にメッセージを送るとするなら?
中途人材だとどうしてもプレイヤー気質の人材が増えてしまい、組織としてそうした人材をまとめあげていくのはとても難しいことだと思います。しかし、会社として目指すべきビジョンがあり、それを明文化し社内に浸透させていくことで、徐々に社内は変わっていくと感じています。紆余曲折ありましたが、今上手く事業が回っているのは、このやり方、考え方が成功している証拠でもあるのかなと。
実体験を元に組織運営のいろはを伝える同業向けの情報配信LINEを開設
ーいままでのお話を振り返ると、まずは会社の目指すべき方向性やルールを定め、並行して社内運営を刷新していく流れだったかと思います。小規模の不動産会社だと、これらを外部の手を借りずに行うのはかなり大変な気がします。
おっしゃる通り大変です。私自身も膨大な工数を割いて、色んなことを犠牲にしながらようやくここまで形にできました。特に理念は共感に始まり、浸透が難しい。浸透の部分は押し付けになったりしないか色々と気を付ける必要があります。世の中には組織運営コンサルティング業を行う会社も沢山ありますが、そこまでのコストをかけることができるのは、限られた事業会社だけだと思います。しかし、本来組織運営を考えなければいけないのは、そこまで予算をかけるリソースを持っていない小規模の会社だと思うんです。なのでこれからは、外部コンサルを雇う余裕はないけれど、今の組織形態ではだめだ!と感じている不動産企業向けに組織運営の役立つようなコンテンツを提供していきたいと考えています。
ーなるほど。実際に不動産事業を立ち上げた創業者であり、なおかつ実体験を元に組織改革を行った本田社長自らが同業向けにコンテンツを提供されていくのですね。
経営者が変われば、社員も変わります。組織も変わります。社員の笑顔が増えます。お客様の前で笑顔が増えます。不動産業界で働く人たちが楽しく働ける環境を増やしていくことは、不動産業界の活性化にもつながるとも感じています。以下のようなお悩みがある企業は、今月からスタートする公式LINEにぜひご登録されてみてください。僕の経験エピソードに基づいた組織運営のノウハウを無料でご提供するほか、不動産に関する情報発信なども行っていきます。またチャットでの相談対応も実施していく方針です。
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中途採用がメインで業務が属人化している
なかなか人が定着しない
スタッフの向いている方向がバラバラで組織としてのまとまりがない
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本田社長プロフィール
ほんだ・こういちろう/鹿児島市出身。1980年12月24日生まれの43歳。九州産業大学卒。大手、中小の不動産会社で経験を積み創業。CPM(米国不動産経営管理士)資格を保有。趣味は海外旅行(バックパッカー)。
グループ概要
総 称 アルマデグループ
創 業 2009年4月1日
代 表 本田 幸一郎
事業内容 事業用・投資用不動産の売買、仲介、新築企画・管理、
民泊運営及び企画、買取再販
本 社 福岡市博多区御供所町 12-1 JCI御供所ビル2F(祇園駅から徒歩6分)
従業員 14人
グループ法人 株式会社アンドエス/株式会社アニマ
公式サイト
https://almade.jp/公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/almade_group アルマデグループ密着ムービー公開中!
[動画:
https://www.youtube.com/watch?v=7dRQpCvcIfA ]
<本件に関するお問い合わせ>
広報担当 赤時(あかじ)
090-8451-7520
akajim@taxlawyer328.com
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