グローバル都市不動産研究所 第26弾(都市政策の専門家 市川宏雄氏監修)
投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(本社:東京都渋谷区、以下GLM)は、(1)東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、(2)不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授 市川宏雄 氏を所長に迎え、「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」を2019年1月1日に設立しました。(過去のレポート一覧はこちら ⇒
https://www.global-link-m.com/company/institute/)
同研究所では、調査・研究の第26弾として、全国の投資用不動産保有者400名を対象に、ESGに対する意識調査を実施しました(本調査は2021年から毎年実施し、今回が4回目)。
【01】 不動産投資のESG「重要だと思う」4年連続で増加
重要だと考える理由「賃料収入などリターンに好影響をもたらす」初の1位
重要だと思う分野は「健康性・快適性の向上」で「気候変動への対応」を上回る
・不動産投資のESGの認知度が向上
グローバル都市不動産研究所では、全国の投資用不動産所有者400人に、不動産投資のESGに関わる意識調査を行いました。この調査は、2021年から実施しており、今回が4回目です。
1.ESGの知名度
そもそも「ESG」という言葉を聞いたことがあるかを尋ねた結果、聞いたことが「ある」は44.0%でした。前年の47.5%から減少しているものの、半数近くの水準を維持しています。
2.不動産のESG投資の知名度
ESGとは別に、「不動産のESG投資」の認知を尋ねました。「知っていた」は31.5%で、前年から微減しました。前ページのESGの知名度も微減していましたが、この1年で「ESG」を使用する報道が減っているとみられ、ESGという言葉を認識する機会が減少している影響がありそうです。
3.不動産のESG投資の重要度
不動産のESG投資の認知を問わず、その内容について、投資先を判断する材料・要素として重要だと思うかを尋ねました。この結果、「重要だと思う」は30.0%、「どちらかというと重要だと思う」は50.5%で、合計80.5%が「重要だと思う(計)」と回答しました。「重要だと思う(計)」は4年連続で増加しており、初めて8割の水準を超えました。
この設問は「不動産のESG投資」を認知していない人にも聞いています。ESGという言葉を知らなくても、投資先判断において環境・社会に対する好悪の影響の考慮が重要だと考える不動産投資家が、継続して増えていることが確認できました。
4.重要だと思う理由
不動産のESG投資が重要だと思うと回答した人に対して、その理由を複数回答で尋ねました。
この結果、「賃料収入などリターンに好影響をもたらすと思うため」 が前年から大きく向上し、「中長期的な資産価値の維持に寄与すると思うため」を上回って初の1位となりました。
環境規制の本格化や、環境対応物件の供給増に伴い、環境未対応物件との比較によって賃料価格に直接的な影響が出ると考えている層が増えていることが分かりました。
5.重要だと思う分野
不動産のESG投資が重要だと思うと回答した人に対して、どのような分野で重要だと思うかを尋ねました。最も回答率が高かった項目は「健康性・快適性」でした。同項目は2022年に1位で、2年ぶりにトップになりました。昨年の1位だった「気候変動への対応」も回答比率は増しています。 ESG対応による入居者への提供価値の考え方が変化したことが考えられます。気候変動への対応の回答比率が増しているため、引き続き「入居者の光熱費抑制」は意識されていることが分かりますが、エネルギー価格の高騰が一段落したことで、居住の健康性・快適性という日常的な暮らしの豊かさを提供価値にしていきたいという投資家の意識がうかがえます。
【02】ESG対応物件 価格上乗せ許容率 4年連続増加(過去最多更新)
ESG対応物件の購入時の増額 80.2%が許容 過去最多
今後の不動産投資でESGを「必ず意識する」も過去最多
6.今後の不動産投資でESGを意識するか
今後の不動産投資で、ESGを意識するか尋ねた結果、「必ず意識すると思う」が25.0%で過去最多となりました。4つの選択肢の中では、「投資目的によっては意識すると思う」が最も多く44.0%、昨年よりも1㌽上昇しています。「投資対象となる物件によっては意識すると思う」は前年の19.0%から15.8%に減少しました。
「必ず意識する」が毎年増えていることから、不動産投資においてESGを意識するべきとの考え方が色濃くなってきていることが分かります。
7.どのような目的であれば意識するか
今後の不動産投資でESGを意識すると回答した人に対して、どのような目的なら意識するか尋ねました。この結果、「不労所得・売却益の獲得」が2年連続で1位になりました。ESG物件に対して賃料や資産価値の観点で注目している様子をうかがうことができます。
8.ESG投資を意識する物件
今後の不動産投資でESGを意識すると回答した人に対して、どのような物件なら意識するか尋ねました。
この結果、「ワンルーム区分マンション」が38.3%で4年連続1位でした。これに「一棟マンション」が33.9%で次いでいます。顕著に回答比率が増しているのは「戸建て」で、3割近くになりました。環境規制が強まる見通しが立ってきたことから、投資用のマンションや戸建ての新築時におけるESG対応の意識が強まっているようです。
非レジデンスでは「一棟ビル」で回答比率が増しています。コロナ禍の一段落によりリモートワークの実施率が下がっており、ビルでの環境対応を意識して、入居企業のESG対応を後押しする意向があると思われます。
9.ESG対応物件の購入額
ESG対応を進めている物件の価格に対する影響を探るため、ESG対応物件の購入額の増額に対する意識を尋ねました。
この結果、「意識はするが、購入費用に差が出ることは許容できない」の回答比率が減る傾向が確認でき、80.2%が増額を許容する結果となりました。この許容度は過去最多です。回答比率が多いのは「3~4%」でした。2022年の20.5%から29.8%に上昇しており、おおよそ3~4%程度の増額ならば許容しやすいと考えている様子をうかがうことができます。
また、回答比率は低いものの「11%以上」を許容する層は4年連続で増加しています。
【03】環境関連の法令・諸制度の変更「運用に良い影響」約半数
省エネ住宅や環境認証の認知度もおおよそ半数程度
新築物件の省エネ基準適合義務化など諸制度変更 認知度4~5割
10.省エネ住宅の認知度
省エネ住宅に関連するキーワードを提示し、認知や所有状況、関心度を尋ねました。提示したキーワードは「ZEH・ZEB」「LCCM」などです。キーワードによって認知度は異なりますが、各キーワードともにおおよそ半数前後が認知していることが分かりました。
11.環境認証の認知度
環境認証や環境評価基準に関連するキーワードを提示し、認知や所有状況、関心度を尋ねました。提示したのは「BELS」「CASBEE」などです。省エネ住宅の調査結果と同様に、各キーワードともにおおよそ半数前後が認知していることが分かりました。
12.不動産の環境対応の法令・制度変更認知
住宅・非住宅の環境に関わる法令・諸制度の変更について、当面の主な動きをいくつか提示し、変更されることを知っているか尋ねました。2024年4月の省エネ性能ラベル表示の努力義務化や2025年4月の新築物件への省エネ基準適合の義務付けなど、「知っている」と回答したのはおおよそ4割~5割でした。知っているかどうかを問わず、こうした変更が、不動産投資の運用に影響を与えるかを聞いたところ、おおよそ半数前後が「良い影響を与える」(「とても良い影響を与えると思う」「良い影響を与えると思う」の合計)と回答しており、ポジティブにとらえていることが分かりました。
【04】都市政策の専門家 市川宏雄所長による分析結果統括
4年間でESGの意識が世の中に定着し、不動産投資にも
影響を与えるという認識が高まりつつある
不動産投資のESGに関わる意識調査は、今回が4回目です。「ESG」という言葉の認知はほぼ定着してきましたが、 「不動産のESG投資」についての質問では、投資先を判断する材料・要素として「重要だと思う」という回答が4年連続で増加し、「どちらかというと重要」の回答を加えると8割を超えました。
その理由は「賃料収入などリターンに好影響をもたらすと思う」 がトップで、「中長期的な資産価値の維持に寄与すると思う」がそれに続きます。では、どのような分野で重要だと思うかの質問では、「健康性・快適性の向上」 「気候変動への対応」「地域社会・経済への寄与」がトップ3でした。
これからの不動産投資でのESGの意識については、例年同様「投資目的によっては意識すると思う」がトップである一方、「必ず意識すると思う」が25.0%で過去最多となりました。不動産投資におけるESGへの意識は年々、強まっていることが分かります。
どのような目的であれば「不動産のESG投資」を意識するかについては、 「不労所得・売却益の獲得」「余剰資金の活用」「老後の年金対策」がトップ3ですが、「将来の住居としての取得」の回答が年々増加していることが注目されます。
今後、ESG投資を意識する物件は何かについては、 「ワンルーム区分マンション」が4年連続1位で、「一棟マンション」 「ファミリー向け区分マンション」が次ぎますが、顕著に「戸建て」の回答比率が増し、3割近くに達しています。環境規制の動向を踏まえ、一棟や戸建てなど新築時におけるESG対応を意識していることが読み取れます。
さらに気になるのは、ESG対応を進めている不動産物件の価格上昇許容度です。今回は、回答者の8割がそれを許容し、 3~4%程度の増額を3割の回答者が受け入れるという結果ですが、11%以上でも受け入れる人も増えつつあります。
こうした背景のひとつとして、物件の環境対応に関する知識の浸透が考えられそうです。「ZEH・ZEB」「LCCM」など省エネ住宅の仕組みや、「BELS」「CASBEE」など環境認証について、おおよそ半数の人が知っており、新築物件の省エネ基準適合義務化などの諸制度変更についても認知度が4~5割あります。
わずか4年間での変化ではありますが、ESGの意識が世の中に定着するとともに、それが不動産投資に影響を与えるのだという認識が着実に高まりつつあるという手ごたえを得ることができます。
取材可能事項
・氏名 :市川 宏雄(いちかわ ひろお)
・生年月日 :1947年 東京生まれ(75歳)
・略歴 :早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士。
世界の都市間競争の視点から大都市の将来を構想し、東京の政策には30年間にわたり関わってきた東京研究の第一人者。
現在、明治大学名誉教授、日本危機管理防災学会・会長、日本テレワーク学会・会長、大都市政策研究機構・理事長、日本危機管理士機構・理事長、森記念財団都市戦略研究所・業務理事、町田市・未来づくり研究所長、Steering Board Member of Future of Urban Development and Services Committee, World Economic Forum(ダボス会議)in Switzerlandなど、要職多数。
・氏名 :金 大仲(きむ てじゅん)
・役職 :株式会社グローバル・リンク・マネジメント 代表取締役社長
・生年月日 :1974年 横浜生まれ(49歳)
・略歴 :神奈川大学法学部法律学科卒業。新卒で金融機関に入社。
その後、家業の飲食店を経て大手デベロッパー企業に転職し年間トップセールスを達成。そこでの経験を経て30歳の時に独立し、グローバル・
リンク・マネジメントを設立。
会社概要
会社名 :株式会社グローバル・リンク・マネジメント
会社HP :
https://www.global-link-m.com/所在地 :東京都渋谷区道玄坂1丁目12番1号渋谷マークシティウエスト21階
代表者:代表取締役社長 金 大仲
設立年月日 :2005年3月
資本金 :5億68百万円(2023年12月末現在)
業務内容 :不動産ソリューション事業(投資用不動産の開発、販売、賃貸管理)
免許登録 :宅地建物取引業 東京都知事(4)第84454号
所属加盟団体 :(社)東京都宅地建物取引業協会、(社)全国宅地建物取引業保証協会、(社)全国住宅産業協会、(財)東日本不動産流通機構、(社)首都圏中高層住宅協会
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