株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の分譲マンション管理市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
1.市場概況
2022年のマンション管理費市場規模(管理費ベース)は、前年比2.2%増の8,206億円と推計した。新築分譲マンション竣工戸数は微減傾向で推移しているが(データ出所:国土交通省推計)、新築分譲マンション価格や人件費等の上昇に連動する形で管理費は引き続き上昇していることから、堅調な伸びが続いている。
一方、2022年の共用部修繕工事市場規模(工事金額ベース)は、前年比21.0%減の5,746億円と推計した。同市場は、マンションの計画修繕周期の影響により年次によって増減がある。2022年は、2008年頃に竣工したマンションの1回目の大規模修繕工事の実施時期に当たるが、当時のマンションの供給戸数はリーマンショックの影響で例年より限られた。従って、2022年は例年に比べて大規模修繕工事件数が減少したことが、市場縮小の主な要因と考える。
2.注目トピック~既存ノウハウや限られたリソースを活かした派生・周辺サービスの強化~
近年、マンション居住者の多様化するニーズや課題に応えるべく管理サービスのメニューを増やし、事業拡大に取り組む動きが見受けられる。
その一つが、第三者管理者方式(※1)の管理サービスである。同サービスは、マンション管理市場における課題である「管理組合役員の成り手不足」に対応するだけでなく、共用部修繕工事の検討や管理組合の会計業務などをマンション管理の専門家が行うことによる「マンション管理の適正化」も期待されている。
また、管理会社からは、自主管理マンション(※2)や小規模マンション向けの、ICTを活用した管理サービスも開発・提供されている。同サービスは、アプリやWEB上で会計業務や管理組合からの情報発信等ができたり、清掃・点検等の業務を近隣マンションとシェアしたりすることで、管理コストの削減を実現したサービスをさす。自主管理マンションや小規模マンションが管理会社に管理を委託しようとした場合、管理委託費の捻出や管理委託費が割高になるなどの課題がある。そこで、アプリやWEBを活用したり、独自の管理体制を構築することで、人件費等の原価を抑えつつマンション管理ができるサービスとして、新たに展開されている。
以上のような、これまで培ってきたマンション管理のノウハウやグループ会社等のリソースを活用し、新たなサービスを開発・提供することにより、マンション管理市場の課題解決に取り組むとともに、管理サービスの幅を広げ事業を拡大する動きがみられる。
(※1)マンション管理会社やマンション管理士などの、区分所有者以外の者が、管理組合の役員または管理者となり、管理組合の運営を行う管理方式。
(※2)共用部や敷地などの管理業務をマンション管理会社に委託せず、管理組合自身で行うこと。
3.将来展望
マンション管理費と共用部修繕工事を合わせたマンション管理市場全体は中長期的に成長すると予測する。
2030年のマンション管理費市場は2022年比19.0%増の9,764億円と予測する。人口減少や少子高齢化といった構造的な問題に加え、新築分譲マンション開発に適した用地不足や中古住宅流通市場の拡大等を背景に、新築分譲マンションの供給戸数の先細りが見込まれるものの、新築分譲マンションが供給され続ける限り、マンション管理市場は拡大する見込みは堅い。
また、共用部修繕工事市場については、2030年は2022年比42.4%増の8,181億円と予測する。経年劣化に伴う小規模な修繕工事の増加や大規模修繕工事適齢期を迎えるマンションストック数の増加より、共用部修繕工事市場の中長期的な拡大が見込まれる。
一方で、マンション管理市場は、マンション居住者の高齢化や建物の老朽化、人材不足を背景とした人件費の上昇、管理組合収支の悪化等課題が多い。今後は、このような課題解決に努めながら、如何に成長を果たしていくかが重要である。
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https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3522調査要綱
1.調査期間: 2024年1月~3月
2.調査対象: マンション管理会社等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2024年03月28日
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