旭化成ホームズ、積水ハウス、大和ハウス工業3社協働在来樹種の都市緑化でネイチャー・ポジティブの実効性とシナジーを実証(ニュースレター)

大和ハウス工業株式会社

2024年9月4日 17時17分

~住宅業界初の3社連携した在来樹種による都市の生物多様性保全活動の推進~

 旭化成ホームズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:川畑 文俊、以下「旭化成ホームズ」)、積水ハウス株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長: 仲井 嘉浩、以下「積水ハウス」)、大和ハウス工業株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:芳井 敬一、以下「大和ハウス工業」)(以下、「3社」)は、国際目標である2030年のネイチャー・ポジティブ(※1)実現に向けて、各住宅メーカーが在来樹種に着目した都市緑化に取り組むことによる生物多様性保全効果のシナジーを実証するため、株式会社シンク・ネイチャーの分析のもと、3社が連携することによる都市のネイチャー・ポジティブの実効性について協働で評価しました。生物多様性保全活動において、住宅メーカー間での協働評価は初めて(※2)となります。

 今回の植栽樹種データに基づいた分析から、在来樹種に着目した3社それぞれの特性のある取り組みが、個社別での貢献を生態学的に補完し合い、ネイチャー・ポジティブの実効性におけるシナジーが明示されました。今回の結果を受けて、3社は都市部に多くの住宅・建築物を供給している住宅メーカーとして、在来樹種に着目した植栽提案を住宅・不動産業界全体で推進し、生物多様性保全への取り組みを加速させることに貢献して参ります。

分析サマリー
1) 3社がそれぞれ異なる特性の様々な樹種を植えてきたことで、個社単位に比べ生物多様性の豊かさが向上
2) 各社が特有のコンセプトで植栽を行うことで、生物多様性の多面的な要素を効果的に再生


 3社は、自然保護区や里山的な環境のみならず、私たちが普段生活している「都市」の生物多様性が、住まい手のウェルビーイングの観点から重要と捉え、在来樹種に着目した独自の街づくり・庭づくりを提案しています。旭化成ホームズでは様々な高さの樹木(階層構造)を植栽し街並みへの貢献と都市に小さな森を創出することを目指した「まちもり」、積水ハウスでは生態系に配慮し地域の気候風土にあった在来樹種を中心に植栽する「5本の樹」計画、大和ハウス工業では様々な用途の不動産に50%以上の在来種を植栽して地域の生態系ネットワークに配慮する「みどりをつなごう!」のコンセプトに基づく緑化活動に取り組んでいます。
 今回は、3社の首都圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)を対象とした樹木本数・樹種のデータを可視化し統合することで、3社の異なる取り組みによる都市の生物多様性保全への効果を分析(※3)しました。

1)3社がそれぞれ異なる特性の様々な樹種を植えてきたことで、個社単位に比べ生物多様性の豊かさが向上
 今回の分析で、3社が各取り組みを通してそれぞれ異なる様々な樹種を植えてきたことで、個社単位に比べ、生物多様性の豊かさが向上したことが分かりました。
 3社が植栽した樹木について、種ごとの個体数を検証したところ、これら植栽樹木種を3社で統合すると、年間で約350種430,000本におよび、最も種数の多かった個社よりも約10%種数が多いことが分かり、3社の都市部における緑化活動の重要性とネイチャー・ポジティブ効果へのポテンシャルの高さを確認できました。
 さらに、このデータを生物多様性評価の指標となる、種数の多さや種の均等性の高さを示す「個体数に関する種の順位曲線(※4)」に表現した結果、個社ごとと比較し3社統合したグラフは傾きが緩やかであることから、様々な種が共存して植栽樹種の多様性が豊かなことが明示されました。


2)各社が特有のコンセプトで植栽を行うことで、生物多様性の多面的な要素を効果的に再生
 株式会社シンク・ネイチャーによる分析で、3社が異なるコンセプトで在来樹種に着目した植栽提案に取り組むことについて、生物多様性の多面的な要素を補完し合い、ネイチャー・ポジティブの実現に効果的につながるとして科学的な意義を評価されました。
 旭化成ホームズの「まちもり」では鳥などの隠れる場所や空間が重要になる生きものの生息地の提供、積水ハウスの「5本の樹」計画では生きものの餌資源の提供、大和ハウス工業の「みどりをつなごう!」のコンセプトに基づく緑化活動では住宅地だけでなく周辺地域での生きものの生息環境の再生など、それぞれが生物多様性に必要な異なる要素があることで多面的に再生することが分かりました。これらにより、再生された都市緑地をきっかけに、更なる生きもののつながり(食物網)の再生も期待されます。

 今回の3社協働による実証は、各企業でそれぞれの緑化コンセプトで在来種に着目した植栽提案を推進したことにより、結果的に生物多様性の多面的な要素を効果的に再生するシナジーを実証し、企業間によるネイチャー・ポジティブの実現に向けた共創の可能性を示唆しました。
 この結果を受けて、旭化成ホームズ、積水ハウス、大和ハウス工業は、さらにネイチャー・ポジティブの実効性を高めるため、より多くの企業や団体に在来樹種を中心とした取り組みに賛同いただけるよう、住宅・不動産業界に対し取り組みを広げるための活動を協働して参ります。

■琉球大学理学部 教授、シンク・ネイチャーCEO 久保田康裕 氏 コメント
 不動産・ハウスメーカーの植栽事業の情報、すなわち「いつ、どこに、どのような種類の樹木を何本植栽したのか?」は、“緑化会計“と言える。今回の3社統合分析は、緑化会計に関するデータ分析であり、緑化の事業資産がもたらした“生物多様性再生への貢献度“を、定量評価している。本分析プロジェクトは、複数企業の植栽事業のネイチャー・ポジティブ効果を可視化することが社会的シグナルとなりうる、世界で初めてのケースだろう。これにより、さらなる企業を巻き込んだ集団的アクションが促され、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」のターゲット12「都市の緑地親水空間の確保」へ寄与することを期待したい。同時に、不動産住宅建設ビジネスにおいて、生物多様性が新たな価値基準となり、アーバンネイチャーポジティブの文脈で、業界全体として高付加価値される状況、新たなビジネス機会の創出を期待したい。


■旭化成ホームズの「まちもり」について


 「まちもり」は、静岡県富士市の旭化成(株)支社内の工場跡地で2007年から取り組んでいる「あさひ・いのちの森」で得られた植生の知見を活用し、住宅の外構計画向けに独自開発した植栽手法です。高木・中木・低木・地被植物という高さの異なる植栽を組み合わせ、ファサード側に植えることにより、豊かな街並みへの貢献と鳥や昆虫などの多様な生き物が訪れる事を目指しています。「まちもり」を搭載した住宅やマンションと、街中にある街路樹や公園などの緑とが繋がることで、より豊かな生態系が育まれ、地域一帯の「エコロジカル・ネットワーク」を形成し、都市の生物多様性保全の活動を推進しています。

まちもり みどり豊かなくらしは生き物にもやさしい
https://www.hebel-haus.com/brand/sustainablestory/machimori/index.html/


■積水ハウスの「5本の樹」計画について
 「5本の樹」計画は、当社が 2001 年から生物多様性保全の取り組みとして、お客様のご協力のもと、生態系に配慮した造園緑化事業として開始したプロジェクトです。“3 本は鳥のために、2 本は蝶のために”という思いを込め、その地域の気候風土にあった在来樹種を中心とした庭づくり・まちづくりを提案しています。事業開始からの累積植栽本数は2,000万本を達成しました。



 2021年には、生物多様性保全効果の実効性を、樹木本数・樹種・位置データと生物多様性ビッグデータを用いて、世界で初めて都市の生物多様性の定量評価の仕組みを構築し、「ネイチャー・ポジティブ方法論」として公開しました。
積水ハウスの「5本の樹」計画
https://www.sekisuihouse.co.jp/gohon_sp/


■大和ハウス工業の「みどりをつなごう!」のコンセプトに基づく緑化活動について


 当社は、創業100周年にあたる2055年を見据えて、2016年度に環境長期ビジョン“Challenge ZERO 2055”を掲げ、持続可能な社会の実現を目指しています。2022年度には、具体的な計画と目標を「エンドレスグリーン プログラム 2026」として策定し、生物多様性への取り組みも進めています。その一環として、ネイチャー・ポジティブ実現に向けて、グループ共通の緑化コンセプト「みどりをつなごう!」を合言葉に、在来種を50%以上採用する緑化活動を進めており、2022年4月から2024年3月までに、地域の生態系に配慮した緑被面積を46.4万平方メートル (東京ドーム約9個分)創出してきました。
大和ハウス工業のネイチャー・ポジティブ実現への取り組み(2024年8月19日リリース)
https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/house/20240808144256.html


■株式会社シンク・ネイチャー


 生物多様性科学において卓越した実績を有する研究者で構成されている琉球大学発スタートアップです。世界の陸・海を網羅した30万種以上の生物の分布データと150以上の生物多様性・自然資本に関する指標を用いた高度な解析により、様々な企業のネイチャー関連事業をサポートしています。生物学・生態学の専門家としての独自の強みを活かし、企業の自然関連リスクの低減、ポジティブインパクトの増大、ならびにネイチャー・ポジティブ経営への転換を支援します。
https://think-nature.jp



※1 ネイチャー・ポジティブとは生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せることを指します
※2 旭化成ホームズ、積水ハウス、大和ハウス工業 調べ
※3 AIとビッグデータを用いた科学的アプローチによって、企業活動が自然に与えるネイチャー・ポジティブ効果を定量化するサービス(https://services.think-nature.jp/gain/)
※4「個体数に関する種の順位曲線」とは、優占種、普通種、希少種の個体数の割合の序列を示すもので、生物多様性の量的指標になります。種の多様性は種の豊富さ(種の数)と均等度(群集の中でのそれぞれの種の数の均等さ)で評価することができます。種数が多く、かつ特定の種が多く偏っているのではなく均等に生息しているほど種の多様性が高いといえます。種の順位グラフでは、横軸が個体数の多い種から数えた種の順位、縦軸が全個体数に占める種の個体数の割合を表します。群集の中の一部の種の割合が大きく、優占種が卓越した「単純な群集」ほど、種の順位グラフの傾きは急になります。一方、様々な種が共存して「生物多様性が豊かな群集」は種の順位グラフの傾きが緩やかになります。このグラフでは、赤色のシンボルと線が、3社の植栽を統合した植栽樹種の順位曲線で、黄色、緑色、水色は、個社ごとの植栽樹種の順位曲線です。個社ごとの植栽樹の種の順位グラフの傾きに比べ、3社統合した種の順位グラフは傾きが緩やかで、植栽樹種の多様性が豊かなことが明らかとなりました。





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