積水ハウスの様々な事業を紹介する「積水ハウス ストーリー」の公開を開始しました。
お客様の戸建て住宅への想いや、商品開発への想いを、毎回テーマを設定してご紹介します。
第26弾として6月24日に、積水ハウスが取り組む、「プラスチックの資源循環について」ご紹介します。
世界規模で深刻なプラスチックごみの問題
■プラスチックごみの問題について考えてみよう
お弁当や飲み物、肉や魚、お菓子などの食品容器、文房具や家電製品や自動車の部品まで、私たちの身の回りには多くのプラスチックが使われています。一方で、安価な素材のため、きちんとリサイクルされずに川や海に流出してしまうと、丈夫な素材のため半永久的に分解されずに、生態系に大きな影響を与えてしまいます。プラスチックごみの海洋汚染問題は、待ったなしの地球規模で対応しなければならない課題です。もしこのままの状況が続くと、海のプラスチックごみの量は2050年までに世界中の魚の重量を超えてしまうという予測も発表されています。
そこで今回はプラスチックごみ問題とどのように向き合っていくのか、その解決のヒントになるかもしれないリサイクル率100%を実現した積水ハウスの取り組みについて紹介したいと思います。
プラスチックの環境問題はSDGsの様々な目標とも深くかかわります
■家を建てる時の廃棄物はどこへ行く?
積水ハウスは1999年に「環境未来計画」を発表し、廃棄物を埋め立てや単純焼却をせず、100%リサイクルするゼロエミッション活動を始めました。当時国内では、焼却炉による大気汚染問題や大規模不法投棄などの事件が発覚し、リサイクルの推進がクローズアップされていました。埋め立てや焼却をやめて廃棄物をリサイクルするためには、しっかりと分別しなければなりません。
全国に先駆けて廃棄物ゼロエミッション活動に参加した積水ハウス 関東工場 資源循環センターの田中 晋は、当時の状況について次のように振り返ります。
「私は工場の設備の企画やメンテナンスをする部署で廃棄物を管理する仕事をしていました。それまで、工場では段ボールや鉄などの有価物は分別してリサイクル業者様に出していたのですが、プラスチックや発泡スチロールなどの複合物は工場の敷地内にあった焼却炉で燃やし、燃えないものは埋立地に送っていました。当時はこれが一般的な処理方法でした。そこに当時の工場長から、企業として地球環境や子どもたちの未来のために、廃棄物のゼロエミッションに取り組もうと言われたのです。このプロジェクトのために全国の工場から8人のメンバーが集められ、手探りの状態で活動が始まりました。」
こうして、工場の生産現場で発生する廃棄物のゼロエミッション活動が始まったそうです。
「廃棄量の多かった使い捨てのPPバンド(ポリプロピレン製の荷しめ用バンド)から、繰り返し使えるラッシングベルト(搬送用の固定ベルト)に切り替えることなどをして、リサイクルだけではなく廃棄物を減らす努力をしていきました。」
そんな努力が実り、2002年には生産部門のゼロエミッションを達成。さらに、建設業界でも難しいと言われていた施工現場のゼロエミッションにも取り組んだのです。廃棄物に対する法規制が厳しく、分別に手間がかかるため、こうした取り組みは業界でも初めての試みでした。
2003年にゼロエミッション活動の拠点になる、関東工場 資源循環センターが設立されたのを皮切りに、全国21か所で同様の自社施設を設置、積水ハウスの全国の施工現場から出る全ての廃棄物は回収され、分別、リサイクルされていきます。回収した廃棄物を分析することで廃棄物の削減にもつながりました。この取り組みにより住宅1棟あたり、3トンあまり発生していた廃棄物が、現在では約半分まで削減されました。一体どのような作業が資源循環センターで行われているのでしょうか。
徹底的に無駄を見直して廃棄物の量を削減
■最初にきちんと分別することが大切
「施工現場では、梱包材、木材の切れ端、給排水配管、樹脂のシートなど様々な廃棄物が出ます。これらをまず、積水ハウスの新築施工現場で職方さんたちが頑張って27品目に分別してくれます。この作業がすごく大変なのですが、こうした現場での協力が不可欠なんです。その後、資源循環センターに運び込まれ、中身を検品しながら更に分別を行います。実は当初は回収されてきた袋の中に、違う種類の廃棄物が混ざっていたり、誤ってビスなどが入っていたこともあったのですが、職方さんたちにこのセンターを見学してもらい、センターでの分別の仕事の大変さを見てもらってからは、そんなことはほとんどなくなりましたね。今では職方さんたちも分別の大切さを分かってくれ、ともにゼロエミッションに取り組んでいます。」
当時の苦労とともに田中が振り返ります。
回収時には、施工現場ごとに全ての袋にQRコードラベルを付けて管理することで、回収もれや不法投棄を防ぎ、さらに廃棄物の内容や量を把握しています。どれくらいの建材が余ったかも確認することが可能となり、廃棄物の削減に大きく役立っています。
資源循環センターと廃棄物の流れ
回収用の袋にはQRコードが付けられ、『いつ』、『どの現場から』、『何が』、『どのくらい排出』という廃棄物のトレーサビリティを実現
■できる限り分別することでリサイクルが可能に
回収された廃棄物はセンターの中で80品目に分別されますが、中でもプラスチック類はリサイクル業者のニーズに合わせて、プラスチックの種類、柔らかさ、色ごとなど、細かく分別されていきます。その数は50品目以上に上ります。なぜなら、積水ハウスでは、廃棄物を再び素材として利用するマテリアルリサイクルを心がけているからです。
給水管や給湯管の端材も異物が混ざっていないかチェックし、素材の種類や色によって分別されます
■プラスチックを資源として循環させるためのリサイクルとは
ところで日本国内で排出されたプラスチックごみの有効利用率ってご存じでしょうか。
2020年の有効利用率は約86%、残りの14%は有効利用されていないのです。しかも有効利用されている710万トンのうち、509万トンがサーマルリサイクルという方法です。これは、これまで焼却処理されていたものから発生した熱を再利用する方法で「エネルギー回収」とも呼ばれています。プラスチックは熱量が大きいので石油や石炭などの貴重な資源の消費の削減にもつながります。しかしその一方で焼却してエネルギーを回収するわけですから、CO2を発生させてしまうなどのデメリットも抱えています。なにより、燃料としてのリサイクルなので資源として循環しているわけではありません。
国内のプラスチック総排出量と有効利用率の推移(出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会「2020年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」より)
一方、積水ハウスの資源循環センターでは、プラスチックのリサイクル率は100%。このうち90%以上を元の素材として再生利用するマテリアルリサイクルをしています。廃材が次の製品に生まれ変わる、つまり『資源として循環』をするわけです。
ただし、複数の素材からなる複合プラスチック、ラベルや接着剤などが剥がせないものなどマテリアルリサイクルでは処理できないものも出てきますから、単純焼却ではなく、熱エネルギーを回収・再利用するサーマルリサイクルされます。
ただ、環境保全というのは積水ハウスグループだけでできることではありません。
だから、「もっともっと多くの人たちに理解を深めてもらいたい」という思いから、積水ハウスでは「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の推進を掲げ、自社の取り組みを一般の方々にも公開しています。
「コロナ禍になる前には海外を含めて年間3,000人以上の人たちが見学に来られていました。子どもたち向けの環境教育プログラムも整え、クイズやゲームを交えながら学んでもらえるようになっています。コロナ禍が収束したら、たくさんの子どもたちに来てもらいたいですね。」
廃棄物として排出されたプラスチックは種類ごとに資源へと再び生まれ変わります
「リサイクル率100%の秘訣を是非見に来てください」 積水ハウス 関東工場 資源循環センター 田中 晋
関東工場 資源循環センターは「積水ハウス エコ・ファースト パーク」施設内にあり、どなたでも見学可能なので、是非、皆さんも一度お越しください。子ども達と一緒にプラスチックの資源循環について、考えてみませんか。
積水ハウス エコ・ファースト パーク(施設見学も可能:事前予約制)
https://www.sekisuihouse.co.jp/efp/積水ハウスのESGの取り組みは下記より資料をダウンロードできます
https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/annual/廃畳の中からリサイクル素材を助け出す。畳解体職人による廃畳の分別の様子を下記SNSで公開中
https://www.facebook.com/sekisuihouse/videos/%E8%B6%85%E6%97%A9%E6%8A%80%E7%95%B3%E8%A7%A3%E4%BD%93%E8%81%B7%E4%BA%BA/1172213539507669/詳細はこちらプレスリリース提供元:@Press